関節リウマチ(RA:Rheumatoid Arthritis)は、従来、慢性関節リウマチと呼ばれていたが、必ずしも慢性でないので、最近では関節リウマチ(以下:RA)と呼ばれている。
しかし、複数の末梢関節滑膜*に炎症性変化を主体として、多くは慢性に経過する進行性の疾患で、薬物療法が治療の中心となる。
*滑膜:synovial membrane
関節包の内層や滑液包をつくる薄膜。血管に富んだ結合組織よりなり、滑液を分泌する。表層を被う滑膜細胞は上皮様細胞で、滑液の粘稠性のもになるヒアルロン酸をつくる。⇒関節の滑膜は滑らかな運動をするため滑液をつくる
RAは治り難い病気とされていたが、最近では治療法の進歩によって、病気の進行はかなりおさえられるようになっている。
RAは原因不明の疾患とされており、免疫異常、遺伝的背景、微生物などの環境因子及び感染などの諸要因が複雑に絡み合って発病する自己免疫疾患と考えられる。
関節リウマチになると運動不足となり、消化器官も弱くなりCaなどの栄養素が不足し、日光にも当たらないのでVDが作られず、ホルモンの分泌が低下するなどのために、骨粗鬆症になりやすい。また、関節リウマチの人は動脈硬化も進行しやすいと報告されている。
(1)関節リウマチの名称の由来
サイエンス( 241:1498:1988)では、3,000〜5,000年前の古代インディアンの中に 6体のRAと一致する骨病変を発見したと発表しており、古くから人類はこの疾患に悩まされていたことが推定される。
リウマチの語源はギリシャ語Rheuma(流れる)に由来し、それを語源として、リューマチズムrheumatismと病名が付けられた。
昔は、リウマチは身体の中を悪い毒が流れることによって起こると考えられ、当時のヒポクラテスらの考えによると、脳から悪い粘液が身体の各所に流れてきて、この悪い「流れ」に乗ってきて、種々の疾患を作ると考えられていた。
はじめてリウマチという言葉を使ったのはガレノスで、神経痛や筋肉痛もこれに加えていた。なお、流体学レオロジーも同じ語源である。
(2)関節リウマチの疫学
RAは世界的にみられ、患者数は人口の 0.5〜1.03%に及ぶと推定されている。 一方、日本では全人口の 0.3〜 0.8%(男性:0.1%、女性:0.8%)と推定する報告もあり、有病率 0.6%とすれば、約70万人の人が、RAに罹患して苦しんでいることが推定される。
男性に比べて女性に多く、特に出産後に多発する。女性患者の2/3は20〜50歳代の働き盛りに多い特徴があり、主婦の敵と言われる。
なお、60歳以上になると男性の患者が急に増加するので、高齢者では男女比は接近しほぼ同数と推定されている。
若年性RA(15歳になるまでに発病したもの)は、現在、約 5,000人(2.0〜2.5人/ 1万人の率)と報告され、女児:男児=1.5:1.0 で女児が多い。成長期に関節炎が長く続くと、身長が伸びないなどの、発育に影響する。
遺伝的要素も大きく、 2親等内にRA患者がいる場合の発病率は、対照群と比べて高く、兄弟がRAを発症した場合の発症率は、一般人口での有病率より高く 3〜7%とされているが、一卵性双生児の場合に比べて確率はかなり下がる。これは高血圧や糖尿病と同じように複数の遺伝的因子が病気に関与していることを示している。
RAは関節の炎症によって、関節が次第に障害を受け、だんだん機能しなくなる疾患で、その進行の状態は多様であり一定していない。経過として最も多いのは、悪くなったり良くなったりを繰り返しながら少しずつ徐々に進行するタイプで、50%以上を占めるが、約20%の患者は発症してから 1〜2 年で完全に治る。時間の経過からみれば、約80%の患者では、ある時期に進行が止まるが、残りの約20%は、治療には反応せず炎症は進行し続け(進行型)、急速に関節領域*の破壊が続き、患者の 1/10の人が、重症で人手をかりないと身の周りの日常生活ができない程度にまで症状は悪化する。
*関節領域:左右の手指第 2関節、第 3関節、手関節、肘関節、膝関節、足関節 及び足の親指のつけ根関節

RAとは、「複数の関節に起こる関節炎を主な症状とする原因不明の慢性の経過をたどる全身性炎症疾患」とされ、ほとんどの場合、全身の免疫異常に伴って、関節滑膜の細胞が異常に増殖して、炎症を起こすことからはじまる。関節滑膜の炎症は、次第に周囲の軟骨、骨の破壊を起こし関節組織を破壊し、変形部位は関節滑膜のみにとどまらず全身に及ぶこともある。
また、まれには皮下結節、上強膜炎、多発性神経炎などの関節外症状を合併することもある。
このような関節外症状を伴うRAは一般に難治性で予後も不良のことが多く、悪性RAと呼ばれる。
⇒RAは主として、関節滑膜の炎症からはじまり、疼痛と骨格筋組織の変形症状が現 れる。病因は複雑で現在のところ確定していないが、RAに罹りやすい遺伝的要素のある人が、ウイルスなどに感染することによって抗体(リウマチ因子:リウマトイド因子)が作られ、本来、侵入してきた外敵に対して攻撃し、体を守る(免疫)べき抗体が、外敵ではなく自分自身の体を攻撃するようになって起こる(自己免疫)病気と考えられている。この自己免疫によって、関節に炎症が起こる。
(1)関節リウマチの症状
最初の免疫反応を引き起こす抗原とその進展を促進する遺伝的機序は、まだ解明されていないが、一度反応が起こると抗原抗体複合体は補体を活性化し、種々の化学伝達物質を放出し、これが原因となって滑膜に炎症が起こると推定されている。RAの症状は、関節症状と関節外症状に分けられる。
症状は一般に、特別な自覚症状もないままに、少しずつ進行(慢性潜行性)し、患者の約2/3は、はじめは全身の疲労感、関節がこわばるなどの漠然とした筋骨系の自覚症状から始まる。朝の起床時に、手足の関節がこわばり、物がつかみ難く、そのこわばりが 1時間以上続く場合は、リウマチの可能性が高い。そして、やがて滑膜炎が現れる。通常いくつかの関節、特に手、手首、膝、足などに対照的に徐々に発症する。朝の「こわばり」はその持続と強さにより疾患の活動性を判断する目安になる。患者の大部分は疲れやすく、倦怠、食欲不振、体重減少、また発熱することもある。
通常関節炎は対称性の形をとり、手関節、近位指節関節(PIP)、中手指節関節(MCP)、中足趾節関節(MTP)に起こるのが特徴である。また、肘、膝関節もしばしば侵される。炎症が持続する場合、種々の特有な変形を起こす。
体には関節が左右対称に64対あるが、リウマチではそのうちの 3カ所以上の関節に腫れが現れる。この腫れは左右の対の関節に現れ、はじめは片方だけでもやがて他の方の関節にも必ず現れる。特に、指の第 2関節、指の付け根、手首の関節など手に多く現れる。これらの部位に症状が現れないで、その他の部位の関節に症状がある場合は、RAでないことが多い。また、一般に指の第 1関節が腫れることはなく、第 1関節が腫れた場合は他の疾患と考えられる。
関節の痛みには、関節の炎症によるものと破壊によるものとがある。関節炎の場合は鈍重なうずくような痛みで、安静時にも起こる。関節破壊による痛みは、関節を動かしたり、重みをかけた時に起こる。
関節の痛みと腫れは、一時的に消失したり、現れたりを長年繰り返し、徐々に進行し、痛いので筋肉が緊張して、関節が動かせなくなり、次第に関節の破壊が進行したり筋力が弱くなって動けなくなる。そして手、肘、膝などの関節は曲がって、固定したままの屈曲拘縮という状態になる。さらに症状が進むと、腱や靭帯が弛緩したり、位置が移動したり、切断したりして、関節の変形、亜脱臼が生じる。
また、RAでは、このような関節症状ばかりでなく、疲れやすく、体重減少、貧血、微熱などがみられることもあり、全身的にも様々な症状を現す。
皮膚は蒼白で薄く弾力を失い、リウマチ結節、手掌紅斑、皮膚紫斑、皮下出血、皮膚潰瘍が現れることもある。リウマチ結節(米粒より大きい皮膚のしこり)、手掌紅斑(毛細血管の充血による手の赤い斑点)は患者の約20〜30%にみられる。その他、胸膜炎、心筋炎、消化管出血、腎障害などが併発されることがある。
特に、全身の小動脈に血管炎を伴うものを悪性関節リウマチといい、厚労省の特定疾患に指定され、医療費の補助が受けられる。
(2)関節リウマチの経過
RAの経過は緩解期と活動期に分け、経過によって次のように分類される。
@単周期型:最初の活動期の後、緩解期が持続しているもの。つまり、一過性に治癒する型で、RAの全体の35%である。
A多周期型:活動期と緩解期を繰り返しているもの。緩解、増悪を繰り返しながら次第に悪化する型で、50%以上を占める。
B進行型 :進行期が持続して緩解期のみられないもの。緩解期を経ることが少なく、悪化の傾向をたどる型で、全体の15%である。
日本ではAが、50〜80%を占めるとする報告もあるほど多い。しかし、早期に適切な治療が行われた場合には、軽く急激な変化をとらずに経過するものが多い。
(3)関節リウマチの関節外症状
RAの症状は主に関節痛で、種々の関節外症状も活動性の高い患者に発症する。
@発熱、貧血、リンパ節腫脹:38℃以上の発熱は通常みられない。貧血は70%の患者にみられる。血漿鉄や鉄結合能が低く、リンパ節や炎症滑膜で消費されると考えられている。リンパ節腫脹は大豆ほどの大きさで、30%にみられ、頚部や腋窩に多い。
Aリウマトイド(皮下)結節:リウマチ診断上、特徴的な所見で、肘頭、肩、後頭、アキレス腱部関節伸側に生じる。圧痛、発赤はない。
B肺病変:胸膜炎がみられる。
C心病変:心膜炎がみられる。心外膜、心筋、弁にもリウマトイド結節が生じる。
D神経症状:炎症関節部の腫脹と破壊により、そこを通る末梢神経が障害される。
E血管炎:リウマチに伴う血管炎により、その支配領域での組織障害が起こる。皮膚では点状出血や潰瘍が起こり、指では小壊死巣から指壊疸までみられる。
F眼病変:球結膜の充血発赤を起こす上強膜炎がみられる。
G筋力低下:疼痛関節周囲の筋力低下がみられる。
単に関節症状といっても、関節症状を示す病気は約60種類もあるので、関節リウマチと診断するために、次のような診断基準が最も広く使われている。
(1)米国リウマチ学会作成の関節リウマチ診断基準(早期リウマチ)
これは米国リウマチ学会作成のもので、RA診断基準として1958年に作成されて以来、長く基準として汎用されていた。しかし、時代とともに見直しの意見が高まり、1987年に改訂(いわゆるゴールドスタンダート)したものである。この改訂診断基準は、次の山前らの基準とほぼ同じであるが、 7項目中、 4項目以上の症状があればRAと診断している。
〔表 1〕米国リウマチ学会作成:分類基準 @ 少なくとも 1時間以上持続する朝のこわばり( 6週間以上持続)
A 3関節領域以上が同時の腫脹、または関節液の貯留( 6週間以上持続)
B 手くび(wrist)、中手指関節(MCP)*-1、近位指関節(PIP)*-2 の腫脹( 6週間以上持続)
C 対称性の関節炎( 6週間以上持続)
D 手・指のX線変化 近位:proximal
E 皮下結節(リウマトイド結節) 枝状に分岐した構造(体肢、脈管など)において、
F 血液検査のリウマトイド因子の存在 幹に近い方を指す言葉*-1 MCP:指先から数えて手指の 3番目の関節
*-2 PIP:指先から数えて手指の 2番目の関節
(2)早期関節リウマチ診断基準試案(山前)
山前らによって、日本で初めて早期リウマチの診断基準が〔表 2〕のように提唱 された。
〔表 2〕早期関節リウマチ診断基準試案(山前) @ 朝のこわばり:15分以上(≧ 1週)
A 三つ以上の関節域*-1の腫脹(≧ 1週)
B 手関節またはMCPまたはPIPまたは足関節またはMTPの腫脹(≧ 1週)
C 対称性腫脹*-2(≧ 1週)
D リウマトイド因子(RF)*-3
E 手または足のX線変化:軟部組織紡錘状腫脹と骨粗鬆症、または骨びらん
以上の 6項目中、 4項目以上あてはまればRAと分類(診断)してよい
*-1:14の関節域すなわち左右それぞれのPIP(近位指節関節)、MCP(中手指節関節、手関節、肘関節、膝関節、足関節、MTP(中足趾節関節)のほか、左右のDIP(遠位指節関節)、肩関節を含む18関節域の三つ以上
*-2:関節炎による腫脹であり、骨過形成による関節腫大でないこと
*-3:免疫グロブリンIgGのFc部分に対する自己抗体で、RA患者血清の70〜80%に認められる。血清中には主にIgM-RFが検出されるが、RAの関節液内ではIgG-RFの産生が亢進しており、RFは免疫複合体(抗原抗体複合体)を形成し、補体を活性化し、組織障害を起こす。また、RAのみならず種々の膠原病や慢性感染症、慢性肝疾患でも陽性となる。
〔図 3〕は、松原らによって作成された早期リウマチ CT(チャート)法で、発症後 1年以内の症例では早期リウマチCT法により診 断された症例のうち90%以上がRAに移行した。従って、現状では〔表 2〕の山前試案と、それに基づいた松原らの早期リウマチCT法を併用する方法を、厚生省早期リウマチ診断基準のガイドラインとした。
RAは、原因が不明なために、治療は原因療法でなく、対症療法が主体となる。完全に治癒することは困難であるが、適切な治療を行えば、多くの場合RAは十分コントロールできると言われ、日常の生活もできる。
(1)治療の基本
従来の関節リウマチの治療は、ピラミッド療法といわれるものが主流で、段階的に治療内容を強力なものに上げていくものであった。これは従来の治療剤には副作用が多く、効果も不十分であったことによる。
しかし、関節リウマチの発症 2年以内に骨破壊が生じることが多く、ピラミッド療法では抗リウマチ剤を含めた免疫療法を開始するのが遅くなってしまい、関節破壊が防止できないと考えられている。
原因療法がない現在、RAの治療目標は次の 3項目である。
@RAの炎症、免疫異常を薬剤で鎮静化する。
A関節機能の維持をはかり、変形を防止する。
BRAが活動化しないように体力を維持する。
いくつかの治療を組み合わせて行われるが、まず、すべての患者に基礎的療法を行って、その上に選択的治療が、必要に応じて加えられる。
基礎的療法とは、患者の病気に対する理解、安静、運動、栄養などの生活環境を調整することをいう。基礎療法としては、安静と適度の運動が必要であるが、この場合、安静が優先する。特に、炎症を起こしている関節部位の安静が必要である。
運動は痛みが少なくとも翌日まで残らないように適度に行う。過度の運動は症状の悪化を招く。日本リウマチ友の会がリウマチ体操などを工夫して作っている。最初は午前、午後の 2回、10分位から始めて、症状に応じて次第に回数と時間を増やす。
物理療法は、朝のこわばりなどの循環障害に対して最もよい。関節炎症の痛みを和らげるには、乾いた熱より、むしろ湿った熱がよいとされている。
病期に分類した治療法は次のように行われる。最近では遅効性抗リウマチ剤の併用投与、間欠投与を始め、発病早期から強力な治療法を行い、炎症阻止をする治療法が用いられている。
(2)ACRガイドラインによるリウマチ管理
抗リウマチ剤はDMARDs(Disease Modifying Anti-Rheumatic Drugs)と呼ばれる。ACRによるRAの治療ガイドラインにも明記されているように、長期的にみてDMARDsは、関節破壊を抑制し関節の機能を保持することが期待され、すべてのRA患者がDMARDs適応となりうる。
DMARDs治療の基本原則は、活動性の高いRAに対して早期から治療を開始し、早期から関節破壊を抑制することにある。
米国リウマチ学会(American College of Rheumatology:ACR)は、RA管理のためにガイドラインを作成した(2002年)。
ACRが提唱したRAの治療ガイドラインによれば、以前には、治療の初期に非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)やステロイド剤で炎症を抑え、 2年ほど経過してから抗リウマチ剤が使われるのが一般的であった。しかし、ガイドラインでは発症から 3カ月後には抗リウマチ剤を使う。これは発症から約 2年の間に急速に関節破壊が進むことがわかってきたことによる。
このため、RA発症早期からメトトレキサ−ト(MTX:リウマトレックス)を中心とした抗リウマチ剤の治療が推奨されている。 ⇒発症早期からの積極的治療
MTXは日本でも1999年に承認されているが、このように世界的にもRA治療の標準剤としての評価が高く、ガイドラインの中心となっている。
また、抗リウマチ剤の効果が不十分であれば、抗リウマチ剤の追加や変更で対応するが、従来からの抗リウマチ剤で効果のない場合は、近年開発されたTNFα、IL-1やIL-6などのサイトカインをターゲットとした生物学的製剤が適用される。
抗リウマチ剤はDMARDs*(Disease Modifying Anti-Rheumatic Drugs:疾患修飾性抗リウマチ剤)と呼ばれる。以前には遅効性抗リウマチ剤と呼ばれた。
(1)DMARDsとは
DMARDsはRAの効能・効果を持つ薬剤のうち、免疫系の異常を是正する作用、あるいは免疫抑制作用を有し、抗炎症剤以外に分類される薬剤の総称で、遅効性抗リウマチ剤(以下:DMARDs)と呼ぶ場合もある。
DMARDsは、炎症自体を抑える作用はないが、RAの免疫異常を修飾することによって、RAの活動性をコントロールする薬剤である。DMARDsは、その作用機序から免疫調節剤と免疫抑制剤とに分けられていたが、新しく生物学的製剤(インフリキシマブ)が加わった。
ACRによるRAの治療ガイドラインにも明記されているように、長期的にみてDMARDsは、関節破壊を抑制し関節の機能を保持することが期待され、すべてのRA患者がDMARDs適応となりうる。
DMARDs治療の基本原則は、活動性の高いRAに対して早期から治療を開始 し、早期から関節破壊を抑制することにある。
〔表 3〕の製剤がRA治療の中心的役割を果たしており、これらの製剤を疾患修飾性抗リウマチ剤と呼ばれるが、必ずしも一定の構造や共通の作用はない。しかし、RAの自然歴である関節破壊の進行を修飾する効果を期待して、このように呼ばれる。
(2)市販されているDMARDs
現在、日本では次の11種類の抗リウマチ剤が承認されている。ただ、〔表 3〕のように11種類の製剤の中には、関節破壊阻害効果が証明されていない製剤もある。
*印のある製剤は日本では承認され、一部の国で承認されているものもあるが、いわゆるローカルドラッグの抗リウマチ剤であり、ブシラミン(リマチル)を除くとリウマチ炎症に対する効果は不十分ではないかとの意見もある。オーラノフィン(リドーラ) は多くの国で承認されているが、関節破壊阻害効果は認められないとされている。
〔表 3〕抗リウマチ剤の種類と効果 A B 薬価収載 摘要 ◇日本で承認されている抗リウマチ剤 @免疫調節剤: a.金チオリンゴ酸Na(シオゾール) 中 △ 2001.7 金製剤(注) b.オーラノフィン(リドーラ) 弱 × 1986.6 〃 c.D-ペニシラミン(メタルカプターゼ) 中 △ 1980.2 SH剤 d.ブシラミン(リマチル)* 中〜強 ? 1987.8 〃 e.サラゾスルファピリジン(アザルフィジンEN) 中〜強 ○ 1995.11 サルファ剤 f.ロベンザリット(カルフェニール)* 弱 ? 1986.6 CCA g.アクタリット(オークル、モ-バー)* 弱 ? 1994.5 A免疫抑制剤: a.ミゾリビン(ブレディニン)* 弱 ? 1984.3 プリン拮抗剤 b.メトトレキサート(リウマトレックス) 強 ○ 1999.5 葉酸拮抗剤 c.レフルノミド(アラバ) 中〜強 ○ 2003.9 イソキサゾール系 B生物製剤: a.インフリキシマブ(レミケ-ド) 強 ○ 2003.5 (注) ◇日本では未承認(一部適応外使用)されている抗リウマチ剤 @免疫抑制剤: アザチオプリン(イムラン、アザニン) 弱 △〜× シクロフォスファミド(エンドキサン) 弱 △ シクロスポリン(サンディミュン、ネオ-ラル) 中〜強 △ タクロリムス(プログラフ) 中〜強 ? Aヒドロキシクロロキン × ミノサイクリン(ミノマイシン) ? B生物学的製剤 エタネルセプト ○ アナキンラ(+MTX) △ アダリムマブ(+MTX) ○ アトリズマブ ? 注)A :抗リウマチ作用
B :関節破壊阻害効果のエビデンス ⇒ [○]、[△]、[×]、[?]
*:日本でのみ承認 下線:日本で臨床開発中
サラゾスルファピリジン、MTX及びレフルノミド(アラバ:免疫抑制剤)、インフリキシマブ(レミケード:生物学的製剤)とMTXとの併用療法には、関節破壊阻害効果が証明されている。こうした製剤はリウマチ炎症を抑えて痛みを軽減する強力な作用がある。
NSAIDsやステロイド剤は、補助的な治療剤として使われ、リハビリテーションも重要な補助療法とされる。
(3)DMARDsの選択
従来はNSAIDsを第 1選択剤として使用し、無効の場合にDMARDsを使用していたが、最近では早い時期から関節破壊への進展阻止をねらいDMARDsを使用することが多い。
DMARDsに関しても選択順序に基準はないが、一般的には副作用の強さなどを参考にして使用する。免疫調節剤は用量依存性がなく、少量でも効果が得られる場合が少なくない。少量から開始し、可能な限り少量でコントロールすることが、副作用の面からみて効果的な使い方とされる。少量で効果のない場合は、時間をかけてゆっくり増量する“go slow, go slow”方法はすべてのDMARDsに共通した使用法である。
炎症が治まったら、リウマチ体操などで関節の動きを保つことが重要である。
第 1選択剤の効果は、投与 6カ月後に必ず判定し、効果不十分であれば次の薬剤(第 2選択剤)に切り替える。厚労省薬物治療班では、 6カ月後の効果判定の基準に、次の 4項目中 2項目以上満足を満足することとしている。
@腫脹関節 2個以下
A赤沈30o/hr以下
BCRP* 1r/dl以下
C血小板35万/o3 以下
*CRP:C-reactive protein C反応性タンパク
炎症や組織破壊性病変が発生すると15〜24時間で患者血清中に急激に増加し、
病変の回復とともに迅速に正常に復する代表的な急性相反応物質acute
phase reactants の 1つである。
その際、発症 2年以内にリウマトイド炎症をコントロールするという意識の基に、第 2選択剤としては、可能な限り有効率が高く、かつ効果がシャープなものを選択する。
(4)DMARDsにおける共通の特徴
DMARDsの共通の特徴として次がある。服薬指導にあたってはこれらを配慮する。
@DMARDsのRAに対する特異性:
DMARDsには非特異的炎症(急性上気道炎などの多くの疾患による様々な種類の炎症)に対する有効性は、ほとんど認められないが、RAに特異的な炎症については確実に軽減し、加えて
1部の薬物には関節破壊阻害効果があることも証明されている。これらのDMARDsは、直接の抗炎症作用がないが、免疫異常を是正して、長期的に関節破壊の進行を抑制することが、共通した特徴として挙げられる。
Aレスポンダーとノンレスポンダー:
DMARDsの効果は個体差が大きく、ある製剤がある症例に有効でも、他の症例には無効であることがある。DMARDsの有効率は30〜70%とされ、レスポンダーとノンレスポンダーを投与前に区別することは現在のところ不可能である。
B効果発現の遅効性:
DMARDsは効果発現までに、その多くは 2〜3 月を要し、「12週続けても効果が見られない場合は他の薬物に変更する」とされている。
Cエスケープ現象:
DMARDsでRAがよくコントロールされていても、治療法を変えないのに、再び活動性が亢進することがあり、エスケープ現象と呼ばれる。この場合、一般には他剤に変更するか、しばらく併用する。
(1)免疫調節剤
@金チオリンゴ酸(シオゾール):
炎症症状の強い場合には、金療法を行う。総投与量200〜300rで効果が発現するが、総投与量500〜800r投与しても効果がない場合は、無効と判断して、SH基を有するペニシラミン、ブシラミンに切り替える。
ASH基:
最近、注目されてきており、早期に用いると関節の変形などの障害の進行を遅くしたり、止めたりするという報告もある。免疫調節剤としては、
D-ペニシラミ ン、ブシラミンなどがある。
生体にはSH基をもった物質が多く存在し、これらは重要な生理作用を行っている。肝細胞内の代謝に関与する酵素の多くはSH酵素であり、肝細胞内に多量に存在する。システインを含むトリペプチドのグルタチオンは解毒、代謝酵素の保護、各種の補酵素的な役割を行っている。SH化合物の一般的薬理作用としては、タンパク-S-S-
結合解離に基づくマクログロブリン分解、リウマチ因子陰性化、喀痰溶解などの作用がある。
(2)免疫抑制剤
@メトトレキサート(リウマトレックス:MTX):
痛みの治療として、MTXなどの抗リウマチ剤は、リウマチ炎症を改善することによって鎮痛効果も得られる。抗リウマチ剤の中で、MTXは有効性の面で最もエビデンスの明確な薬剤とされる。
MTXは 2〜8 週で効果が認められる。また、他のDMARDsと比較してエスケープ現象が少ない。欧米の臨床試験では、
3年以上内服を継続した患者が50%以上を占め、他のDMARDsと比較しても最も多いと報告され、切れ味、有効率に優れ、第
1選択剤となっているが、日本では、「他のDMARDsが無効のRA」が適応となっている。
MTXを中止する原因は、無効よりも副作用であることが多く、治療効果の高さと副作用の多さを反映している。投与方法は週
1回投与で、2Cap.(4r)朝、夕から開始する。治療効果は用量依存性で、治療効果が
3〜4 週しても、現れない場合には増量する。保険では 8r*まで増量可能であるが、10r以上が適量である例も少なくない。
*:日本では他剤無効の難治例または重症例に 6〜8 rを週 1回投与することが認められているが、欧米では発症早期から積極的に使われ、 1週間に最高25rくらいまで使われる。
Aレフルノミド(アラバ): leflunomide 薬価収載:2003.9.12
⇒細胞性免疫及び液性免疫亢進の両方を抑制⇒免疫系の異常を是正
レフルノミドはイソキサゾール誘導体で、米国で1999年に承認された免疫抑制剤である(腸管や肝などで代謝されて作用するプロドラッグ)。レフルノミドは抗リウマチ剤が本来持つべき性質である関節破壊阻害効果が認められている。
通常、成人にはレフルノミドとして、 1日 1回 100r 1錠の 3日間の経口投与から開始し、その後、維持量として
1日 1回20rを経口投与する。なお、維持量は症状、体重により適宜 1日 1回10rに減量する。
レフルノミドの活性代謝物が、活性化リンパ球である de novoピリミジン生合成に関与する酵素ジヒドロオロテートデヒドロゲナーゼの活性を阻害することにより、活性化リンパ球細胞増殖抑制作用を示す。関節リウマチ症状の改善、関節破壊進行の抑制、身体機能やQOLの改善などが認められている。
活性体の血中半減期は15〜18日と長いのは、血中タンパクとの高い結合性と腸肝循環が原因と考えられる。重篤な副作用が生じた場合にはコレスチラミンの投与により、腸肝循環を阻害することで半減期を約
1〜2 日に短縮できる。
臨床的にはサラゾスルファピリジン(SASP:アザルフィジンEN) やMTX以上と報告されている。有効性の評価の中で、QOLの指標では、顕著な効果が得られている。
副作用としては、下痢などの消化器症状、皮膚症状、脱毛、高血圧、肝障害などがあるが、間質性肺炎が少ないことが挙げられる。しかし、MTX以上に肝障害が重症化する例が報告されている。
(3)生物学的製剤
〔該当製剤〕インフリキシマブ(レミケ-ド):infliximab 点滴静注
薬価収載:クロ−ン病 2002.4.26 関節リウマチ 2003.7.17
近年開発されたTNFα、IL-1やIL-6などは、炎症惹起物質であるサイトカインを直接中和するもので、従来の薬剤とは異なる概念に基づいて開発された。
ヒトTNF-α に結合することにより、次の作用を発揮する。
@可溶型TNF-α に結合し、その生化学的作用を中和
ATNF-α 受容体に結合してTNF-α を解離
B膜結合型TNF-α に結合し、TNF-α 産生細胞を障害
米国では先にクローン病に対して承認され、リウマチは1999年に承認された。インフリキシマブはTNF-αを直接阻害する cA2(抗TNF-αモノクローナル抗体)で、マウス由来の可変領域を含むキメラ抗体である。静注で 1〜3 か月毎に投与する。血中半減期は 9〜13日ほどである。
単独でもリウマチに対して有効であるが、MTX併用により、作用点での相乗効果に加えてアレルギー反応や中和抗体の産生が抑制されると示唆されている。
*生物学的製剤:
生物学製剤とは、細胞工学の方法や分子生物学的手法を用いて作られるタンパク質の製剤の総称。
最近の研究では、免疫や炎症に関わる分子や細胞が多く発見され、その中でも最も重要と考えられる分子や細胞を抑えることで、関節リウマチの治療することが行われるようになっている。
例:腫瘍壊死因子(TNF)と呼ばれる因子は、関節リウマチの関節で多く作られ、滑膜細胞の増殖、関節破壊、リンパ球の浸潤など、症状の多くに関わっているので、これに対する抗TNFモノクローナル抗体など。
炎症で障害を与えるものの、生理的な必要な分子を抑える可能性がある。
タンパク質であるから、それに対する免疫反応が起き、発赤やショックを起こすことがある。開発費がかかり過ぎる欠点がある。
(4)非ステロイド性消炎鎮痛剤
酸性剤と非酸性剤に分けられるが、非酸性の薬剤は抗炎症作用が弱いために、関節リウマチにはほとんど使用されず、酸性NSAIDsを用いる。
NSAIDsの作用機序は、アラキドン酸カスケードのシクロオキシゲナーゼ阻害作用によるPG合成抑制である。なお、ステロイド剤の作用機序はホスホリパー ゼA2 を阻害するアラキドン酸合成抑制である。
NSAIDsの選択には一定の原則はないが、一般的にはプロピオン酸系製剤は抗リウマチ作用はやや劣るが、副作用の発現頻度が低く、長期間の服薬に耐えることができる利点がある。オキシカム系、ピラゾロン系、アリール酢酸系などの製剤は、抗リウマチ作用は強力であるが、副作用の発生頻度が高い。
メフェナム酸(ポンタール)は抗リウマチ作用は弱いが、鎮痛作用が強いため、疼痛を主症状とする病態に用いられる。
NSAIDsは速効性であり、一般的に 2週間程度で有効か否かを評価できる。無効の場合は他のNSAIDsに変更し、多剤併用は原則として避ける。
〔表 4〕NSAIDsの血中半減期による使い分け @短時間型:血中濃度の立ち上がりが早く、消失も早い
a.適応:急性炎症、慢性炎症急性増悪期
b.用法: 3回/日投与
c.薬剤:ロキソニン、ロルカム、ボルタレン、クリノリルA中間型:血中濃度の立ち上がりが早く、消失も早い
a.適応:急性〜慢性炎症
b.用法: 2回/日投与
c.薬剤:ボルタレンSR、ハイペン/オステラック、インフリーB超時間型:血中濃度が徐々にの立ち上がり、安定
a.適応:慢性炎症
b.用法: 1回/日投与
c.薬剤:モービック、フルカム、レリフェン
〔表 5〕非ステロイド性消炎鎮痛剤の副作用 症状 発生機序 注意・対策など 胃粘膜障害 直接作用
PG生合成抑制剤形変更、胃腸薬併用、食直後服用、無症状の場合あり 浮腫・腎障害 直接作用
PG生合成抑制高齢者、心、腎機能低下者に起こりやすい 発疹 アレルギー ときに重篤な症例あり 肝障害 直接作用
アレルギー定期的検査で早期発見 アスピリン喘息 PG生合成抑制 喘息の既往に注意 再生不良性貧血 不明 定期的検査で早期発見 無菌性髄膜炎 不明 イブフロフェン(ブルフェン)などに変更 けいれん けいれん閾値の下降 ニューキノロン系抗菌剤との併用に注意
NSAIDsの使用にあたっての原則は次のようである。
@同じ群に分類されるNSAIDsは、ほぼ同じ薬理作用と副作用を有している。
ANSAIDsの有効性の患者間における差は、薬物間の差よりも大きく、いかに有用性の高い製剤でも20%近くの患者には反応しない。
B同系統製剤の同時併用は避ける。
オキシカム系、オキサプロジン(アルボ)、 ナブメトン(レリフェン)などの半減期の長い製剤は高齢者や、腎機能が低下している患者には注意が必要である。
CRAの炎症がほぼ終熄し、関節変形が残った晩期にはNSAIDsで疼痛のコントロ−ルを行うとともに関節機能の再建が考慮される。
(5)副腎皮質ステロイド剤
副腎皮質ステロイドの薬理作用は抗炎症・免疫抑制作用のみならず種々の作用がある一方、有害な反応を起こすこともある。
RAにおけるステロイド剤は、一般に次の場合に用いられる。
@DMARDsでは効果のない症例
ADMARDsの効果が得られるまでの症例
B肺線維症を合併している症例など
また、一時的に使用する対象としては、外科的手術時・苦痛のため社会生活に支障のある症例が適応とされ、このような場合でも、プレドニン換算で 5〜15r/日とし、効果があり次第漸減し、維持量は 5r/日以下とすべきである。
RAに対する薬物療法は、薬物の作用(効果)と副作用のバランス上にある典型的なものである。
炎症や疼痛に関しては、薬物の進歩に伴い、かなりコントロールされるようになったが、時間、天候、季節によって影響されるため、RAの年間リズムをつかむよう患者を指導することが必要である。
服薬指導を行う場合、まず治療は最初から緩解あるいは完治を目指すのではなく、進行を止め、この疾患は生涯治療が必要であることを理解させることが必要で、次のことを正確に伝える。
@どのような目的で各薬剤が投与されているのか
Aどの薬が必ず服用しなければならない薬なのか
B副作用が発生したらどのように対処すべきなのか
C患者は次の問題をかかえているので、どのように対処して段階的な服薬指導を進めるのか
a.医療への不満、不信感が募ってくる
b.長期服用により薬物に対する不安が生じてくる。使用している薬物の薬効に対する信頼感、その重要性に対する認識が欠如してしまう
c.医師に内緒で民間薬を服用したり、民間治療を受ける
d.治療に慣れるに従い、ノンコンプライアンスになる
e.薬物、サプリメントを他の患者に渡したり、もらったりする
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