9.低血糖およびシックデイ
<低血糖とは>
健常者では、血糖値は60~140mg/dlの範囲に保たれています。なんらかの原因により血糖値が低下し、さまざまな症状をきたした状態を低血糖といいます。厳密な数値としての定義はありませんが、臨床的には70mg/dl以下とすることが多いようです。
<低血糖症状とは>
血液中の糖分が少なくなくなりすぎた状態で、
・異常な空腹感
・力が抜けた感じ
・発汗
・手足のふるえ
・眼のちらつき
・頭が痛い
・ぼんやりする
・ふらつく
・いつもと違った異常な行動をとる
激しい場合は
・けいれん
・意識を失う
などの症状が起こります。
<低血糖時の対応>
低血糖症状を起こした場合は、必ず早めに主治医に報告して下さい。
1.経口摂取が可能な場合は、ブドウ糖(5~10g、砂糖の場合は少なくともブドウ糖の倍量)またはブドウ糖を含む清涼飲料水(150~200ml)を飲んで下さい。
α-グリコシダーゼ阻害薬を服用中の人は、ブドウ糖またはブドウ糖を含む清涼飲料水をとって下さい。
2.すぐに立ち上がらず、30分位はそのままで安静にして下さい。約15分後も低血糖が持続しているようならば、再度同一量を飲んで下さい。
3.経口摂取が不可能な場合は、ブドウ糖または砂糖を唇と歯肉の間に塗りつけ、またグルカゴン(血糖上昇ホルモン)があれば1バイアル(1mg)を家族が注射し、主治医と連絡をとり医療機関へ運んで下さい。
〔参考〕
商品名 | ブドウ糖 | ショ糖 | 容量(ml) |
HI-Cオレンジ | 15.40 | 1.22 | 350 |
はちみつレモン | 15.10 | 1.06 | 350 |
マミー | 9.81 | 2.13 | 240 |
HI-Cアップル | 13.90 | 0.84 | 350 |
コカ・コーラ | 12.95 | 3.89 | 350 |
実ごろ飲みごろ | 10.70 | 2.85 | 280 |
オロナミンCドリンク | 3.89 | 9.82 | 120 |
ピクニック フルーツ | 6.24 | 1.64 | 200 |
ミロ | 5.93 | 4.20 | 200 |
ピクニック コーヒー | 4.54 | 2.06 | 200 |
紅茶花伝 | 0.12 | 18.70 | 340 |
ジョージア(コーヒー) | 0.09 | 19.30 | 250 |
ネスカフェサンタマルテ | 0.05 | 10.70 | 190 |
サントリー コーヒーボス | 0.08 | 16.50 | 250 |
午後の紅茶 (ストレートティー) | 0.09 | 14.60 | 340 |
ピコ (ミルクティー) | 0.11 | 20.40 | 340 |
注)100g中のブドウ糖含有量の高い順に記載
(各メーカー測定値)
<低血糖を起こさないために>
1.薬の量やのみ方は主治医の指導を正しく守り、量やのみ方を自分勝手に変えないで下さい。
2.食事をみだりに減らしたり抜いたりしないように、食事療法はきちんと守りましょう。
食事がとれないときは、とりあえず服用を止め、主治医に相談して下さい。
3.激しい運動、空腹時の運動、下痢などは低血糖を起こしやすくするので注意しましょう。
4.他の薬と併用すると低血糖症状を起こすことがあるため、何か別の薬をのむときは主治医に相談して下さい。
また、他の医師にかかる場合は、糖尿病治療薬をのんでいることを必ず伝えて下さい。
5.日頃からポケットやバッグの中など常に糖分を持ち歩き、その場で糖分をとれるようにしておくことが必要です。
6.万一に備えて“自分は糖尿病患者でありどのような薬を使用しているか”を記したIDカード*や糖尿病手帳などを身につけてことが必要です。
7.自動車を運転する場合は、必ずブドウ糖またはブドウ糖を多く含む食品を車に常備し、運転時に低血糖を感じたら直ちに車を路地に寄せて停止し、ブドウ糖またはブドウ糖を多く含む食品をとるようにして下さい。
低血糖を起こしやすい人は、空腹時の運転は避けるか、何か食べてから運転するように心がけて下さい。
8.起床時に下着が異常に湿っている、筋肉が疲れた感じがする、頭痛、夜中に悪夢でうなされたことがある場合は、夜中に低血糖を起こしている可能性がありますので、その旨を医師に相談して下さい。
*IDカード:
「私は糖尿病患者です」と表示された名刺サイズのカード。送料のみで入手できる。
問い合わせ先:日本糖尿病協会(電話03-3437-1388)
シックデイ(sick day)
<シックデイ(sick day)とは>
糖尿病患者が治療中に一般には発熱、下痢、嘔吐をきたし、または食欲不振のため食事ができないなどの一過性の急性疾患の状態をシックデイ(sick day)と呼びます。
下痢、嘔吐による水分喪失、嘔気による水分補給不足、発熱による脱水が糖尿病をさらに悪化させます。
<シックデイ(sick day)の対応>
発熱、下痢、嘔吐、または食欲不振などの症状になった場合は、
1.水分を十分に補給する。
トイレが遠くならないように注意する。
2.食事が摂れないようであれば、スポーツ飲料を冷やさないで飲む。
スポーツ飲料は脱水、電解質不足の補正に最適である。1日1L程度、なるべくブドウ糖含有のものを選ぶ。
天然ジュース系の一部、特に柑橘系のものは胃への刺激が強く、吐気を誘発することがあるので避ける。
3.食欲がないときは、無理せず、日頃食べ慣れていて口当たりが良く、消化の良い食物(おかゆ、パン、スープ類)を選ぶ。
特に糖質と水分の摂取を優先にし、少量ずつ頻回にとる。
4.経口血糖降下剤は、迷ったらとりあえず服用しない。
数日以内には主治医に連絡して相談する。
5.インスリン治療中の患者は、食事が摂れていなくてもインスリン注射を続ける。
なるべく早く主治医に連絡をとる。
6.これらに備えて、自分や家族が血糖を測定できるようになっているのが望ましい。また、医療機関への連絡方法も家族を含め決めておく。
などの注意をして下さい。