11.片頭痛
「頭が痛い」という症状は、多くの人が経験していますが、その原因は数多く、「頭痛」を大きく分けると脳腫瘍やくも膜下出血など頭蓋内の病変により起こる症候性頭痛と頭蓋内には病変のない機能性頭痛に分けられます。ほとんどの頭痛が機能性頭痛の片頭痛と筋緊張性頭痛です。
<片頭痛とは>
体質として遺伝することが多く、20~50歳代の若年層、特に女性に多い。血管は常に収縮と拡張を繰り返しており、何らかの原因で、頭蓋内外の血管が拡張したときに、血管の周囲にある知覚神経が刺激され、急に頭の片側もしくは両側に激しい拍動性(ズキンズキンと脈拍に一致する)の痛みを感じ、吐き気や嘔吐を伴ったりします。発生の仕組みについてはいくつかの説がありますが、いずれにしても血管の収縮を起こすセロトニンが関与していると言われます。
片頭痛が始まる前には、予兆症状として、痛みの起こる2~3時間前にあくび、イライラ、眠気、むくみ、空腹感などが感じられ、痛みの起こる30分くらい前に、前兆として、目の前がチカチカと星が飛ぶような感じ(閃輝暗点*)や手足のしびれ、手足の力が抜けるなどの症状が起こるこがあります。これらは、頭の血管が拡張する前にいったん収縮する。その収縮によって血流が悪くなって起こるため、血管が拡張して痛みが始まる前には症状は消えます。
*閃輝暗点:視界にチカチカした光が広がり、広がった光の真ん中から暗くなっていき、ついには目の前が見えなくなってしまう。
<薬の種類と飲み方>
*痛みの軽い場合
痛みの程度が軽い場合は、非ステロイド性消炎鎮痛剤をのむことで、痛みをおさえることができます。
非ステロイド性鎮痛剤のナプロキセン、ジクロフェナムナトリウム、インドメタシン、市販の鎮痛薬にも配合されるアスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェンなど。
また、発作時の悪心・嘔吐により、鎮痛薬の吸収が悪くなることがあるため、メトクロプラミドやドンペリドンなどの吐き気をおさえる薬をのむことがあります。吐き気がひどく内服薬が使えない場合は、坐薬を使うこともあります。
*鎮痛薬が効かない場合
◆エルゴタミン製剤:
片頭痛の治療は、前兆があらわれたら血管収縮薬を服用すると、血管の拡張をおさえられるので、頭痛の発作を予防できます。目の前がチカチカして頭痛が起こりそうなときや頭痛が起きたときすぐにのまないと十分には効果がありません。
●酒石酸エルゴタミン・無水カフェイン、メシル酸ジヒドロエルゴタミン
ライ麦に発生するカビ(麦角菌)から作られた薬で、血管を収縮させる働きがあります。
最初の症候があらわれたときすぐに1~2錠服用します。30分以内に効果がなければもう1錠のみます。あまり効果がないからといってその後さらに多くのんでも効果は期待できません。1日6錠以上、あるいは1週間に10錠以上のまないようにします。また、片頭痛以外の頭痛には効果はありません。
発作のときだけにのむべき薬で、常用する薬ではありません。予防のために持続的に服用して急に止めると、その反作用で血管が拡張し、ひどい頭痛が起きることがあります。
-副作用と注意-
1.副作用として、発疹やかゆみ、手足の先に刺すような痛みを感じる、悪心、嘔吐、胃腸障害、胸のむかつき、めまい、手足の脱力感などが起こることがあります。
2.この薬は、血管を収縮させるので、心臓病(狭心症や心筋梗塞を起こしたことのある人)や動脈硬化で手足の血のめぐりが悪い人、肝臓や腎臓に障害のある人、緑内障の治療を受けている人、妊娠している人、授乳中の人は服用できませんので、あらかじめ医師に申し出て下さい。
◆スマトリプタン、ゾルミトリプタン、臭化水素酸エレトリプタン、リザトリプタン
発作時に脳の血管の拡張を抑えるとともに、痛み物質の放出を抑えて血管の炎症も抑えます。そのため痛みが起こってから使用しても効果があります。
-副作用と注意-
1.副作用として嘔吐、吐き気、めまい、眠気、脱力感などが起こることがあります。
2.この薬は、血管を収縮させるので、心臓病や動脈硬化のある人、肝臓、腎臓に障害のある人、てんかんや痙攣を起こしやすい人などは注意が必要です。
*予防的薬剤
発作が月に2~3回以上生じるとき、頻度が少なくても重症度が高く持続が長い場合、月経前など予想がつく場合などに予防的に使われます。
◆塩酸ロメリジン:
細胞の興奮を抑え、血管収縮をおさえます。体質を改善して発作の回数を減らすことを目的とした薬なので、痛みがある時に飲んでも効果はありません。1ヶ月以上は飲み続けるようにします。
*頭痛がひどいとき
薬の服用が遅れたり、発作の程度が強い場合は、薬だけでは痛みをおさえきれませんので、とりあえず、鎮痛薬をのんだあと、暗い静かな部屋で安静にして、発作が治まるのを待って下さい。このとき、痛む部分を冷やすと、痛みがやわらぎます。
<日常生活の注意点>
片頭痛を予防するために、次のような点に注意しましょう。
1.ストレス:精神的ストレスは片頭痛の誘因になります。また、ストレスから解放されたときに発作が起きることもありますので、疲労をためず、リズムのある生活を心がけましょう。
2.寝不足、寝過ぎ:寝不足だけでなく、寝過ぎることも片頭痛の誘因になります。
3.騒音、まぶしい光:騒音やまぶしい光は、発作時につらいだけでなく、片頭痛の誘因にもなります。
4.食事:ビタミンB群(緑黄色野菜、鶏肉、卵など)、マグネシウム(豆腐、納豆、ほうれん草、魚介類)を多めにとって下さい。また、チョコレート、チーズ(特に熟成チーズ)、ナッツ類、柑橘類、アルコール(特に赤ワイン)、ソーセージ、コーヒー、紅茶、濃いお茶など血管を拡張させる食品の食べ過ぎ、飲み過ぎに注意しましょう。