12.アトピー性皮膚炎
<アトピー性皮膚炎とは>
アトピー性皮膚炎は、「アトピー素因」という体質がある人が、主に乳児期から学童期にかけて発症し、成長とともに軽快してくのが一般的です。しかし、現在では思春期を過ぎても依然強い症状があったりと、成人での場合は治りにくく、重症化することもあります。
症状は、強いかゆみを伴うザラザラとした赤い湿疹が、左右対称に現れ、患部は、ジクジクすることもあれば、カサカサに乾燥して、皮膚が厚く硬くなったりします。また、年齢によって症状の現れる部分が異なるという特徴があります。
・乳幼児期(3歳くらいまで)・・・頭や顔にジクジクした発疹ができます。発疹がかさぶたのようになることもあり、そのままにしておくと徐々に全身に広がっていきます。
・幼小児期(4歳くらい~13歳くらい)・・・発疹のできる部分が特にひじやひざの内側、皮膚がこすれたり、汗をかく部分に多く、全身に広がり、皮膚が乾燥してきます。
・思春期以降・・・皮膚の乾燥が増し、発疹のでる範囲が全身に広がります。重症化しやすく、炎症を繰り返す部分は、色素が沈着して黒ずんだりします。
<薬の種類と使い方・のみ方>
アトピー性皮膚炎の治療の基本は、スキンケアですが、症状が強いときは、炎症を鎮める外用剤とかゆみを止める内服剤を使います。
◆副腎皮質ホルモン(ステロイドホルモン)外用剤:
ステロイド外用剤は効き目の強さによって、5群に分けられます。症状の強さ、皮膚の状態、炎症のある部分などによって薬の強さが決まります。例えば、顔、首やわきの下など皮膚が薄く、吸収率の高い部位には、弱めの薬を、手のひらや足の裏、背中などの比較的皮膚の厚い、吸収率の低い部分は強めの薬を使います。
副作用として、長期間使っていると、皮膚が萎縮して薄くなる、皮膚の赤みが増す、皮膚の感染症(たむし、おでき)にかかりやすくなる、顔面(目の周り)に塗っていると緑内障・白内障を起こすことがある、毛細血管が拡張するなどの症状が起こることがあります。
症状がよくなってきても、ステロイド外用剤を急に止めると急激に症状が悪くなることがありますので、勝手に使用を止めないで下さい。医師の指示に従い、塗る部位、回数を守り、皮膚に薄くのばすように塗って下さい。
◆免疫調整剤:
新しい塗り薬で、最初は臓器移植における拒絶反応をおさえるために飲み薬や注射薬で使用されていた薬です。
傷や、ジクジクしている部分、おでき、にきび、粘膜部分などは避け、塗布部分を長時間日光にさらさないようにして下さい。この軟膏を塗った直後しばらくの間、かゆみやほてりやヒリヒリ感が起こることがあり、特に入浴時に強く感じます。ふつう1週間位で治ります。又、妊婦や妊娠している可能性のある場合及び小児は使わないようにして下さい。
副作用として、びらんや亀裂のある部位に使用するとほてったり、痛くなったり、かゆくなったりすることがあります。又、細菌、真菌、ウイルスなどによる感染症が起こりやすくなることがあります。
◆保湿剤:
保湿剤には、皮膚の乾燥を防いだり、刺激となる原因物質が直接皮膚に触れないように守る働きがあります。また、毎日使うものなので、夏はサラサラしたもの、冬は油分の多いものなど季節によって使い分けるのもよいでしょう。
●油脂性軟膏:ワセリン、亜鉛華単軟膏
油脂性の基剤として、炎症部位の保護力が強く、副作用はほとんどありません。
●乳剤性軟膏:尿素軟膏、親水軟膏など
乾燥した角質層の水分保有力を高め皮膚に潤いを与えます。
●油製剤:オリーブ油、ツバキ油
◆抗ヒスタミン剤:
かゆみを起こす原因物質の一部である「ヒスタミン」をおさえる働きのある内服剤です。
副作用として、眠気を催しますので、服用中の車の運転など危険を伴う作業はしないようにして下さい。その他に、口が渇く、便秘、尿が出にくい、体がだるい、ふらつき感などの症状が起こることがあります。
◆抗アレルギー剤:
アレルギー反応の原因となる化学物質の分泌をおさえ、かゆみや炎症に効果のある内服剤です。抗ヒスタミン作用をもたないものと抗ヒスタミン作用をもつものとに分けられますが、すぐに効果が現れるものではなく、2~4週間のみ続けて効果が現れます。
副作用として、抗ヒスタミン作用のあるものは、眠気を催しますので、服用中の車の運転や危険な作業はしないようにして下さい。その他に、体がだるい、ふらつき感、口の渇き、食欲不振、吐き気などが現れることがあります。
<スキンケア>
スキンケアは、皮膚に潤いを与え、皮膚を清潔に保つことは皮膚炎を改善するために重要な治療法です。
・外から帰ったらなるべく早く入浴する・・・できるだけ早く皮膚についた汗や汚れを取るようにしましょう。外出先では、濡れタオルなどで体をぬぐうようにして下さい。
・頭や体を洗う際はやさしく・・・ガーゼなどの柔らかい布や手のひらで、爪を立てないようにやさしく洗いましょう。
・石鹸やシャンプーは刺激の少ないものを・・・洗浄力の強い石鹸、シャンプーは皮膚の油分をとりすぎるので避けて下さい。
・入浴剤は入浴後ほてりの少ないものを・・・入浴後ほてり感があるとかゆみを増しますので注意して下さい。また、保湿効果のあるものを選べば効果が上がります。
・保湿剤を使う・・・十分な量を皮膚全体に満遍なく塗って下さい。
<日常生活の注意点>
・アレルギー反応の原因を取り除く・・・ダニやほこり、ペットの毛、ふけなどを減らすために、こまめに掃除、寝具の洗濯、布団干しをしましょう。また、布や毛でできたぬいぐるみやクッションなどダニがつきやすいものはできるだけ家に置かない、できれば床は板張りにする、換気をよくする、ペットや植物は屋外に出すなど気をつけて下さい。
・衣服・・・皮膚に直接触れる下着や衣類は、化学繊維などを避けて、柔らかい綿のものを選んで下さい。新品の下着やシーツにはホルマリンが含まれていることがありますので、一度洗濯してから使うようにして下さい。
・部屋の温度・湿度・・・部屋が暖まりすぎたり、乾燥しすぎてもかゆみが誘発されます。
・入浴・・・ふろはあまり熱くすると、かゆみが増し、皮膚が乾燥する原因にもなります。ぬるめのお湯でさっとつかるようにしましょう。
・あまり神経質になりすぎない・・・神経質になりすぎて、ストレスになってしまうと、症状を悪くしかねません。あせらず、気長に医師の指導のもとで、治療を続けましょう。