19.う蝕(虫歯)
歯科領域の2大疾患は、う蝕(虫歯)と歯周病で、歯を失う原因の4割がう蝕、5割を歯周病が占めています。
歯を失うことにより咀嚼能力が低下し、栄養バランスが崩れ、生活習慣病(がん、糖尿病、脳血管疾患、心疾患)のリスク因子となることが明らかにされています。そのため生活習慣の予防を目的とする国民運動である「健康日本21」の9つの対象分野の一つに「歯の健康」として位置づけられています。
<う蝕(虫歯)とは>
虫歯とは空気を好む好気細菌によって菌から歯の表面のエナメル質を溶かす酸が出され穴があく状態をいいます。
今からおよそ4,000年も前に、虫歯は歯が口の中にいる虫に食べられて穴があいたとする学説が唱えられ、以後信じられてきましが、18世紀にそのような考え方は否定され、1890年になって細菌が口の中で食べかすから酸をつくりだし、その酸で歯が溶けたとする考え方がだされ、現在にいたりました。
<虫歯の原因>
1.虫歯菌:
虫歯菌(ミュータンス連鎖球菌など)が砂糖(糖質)からグルカンという物質を合成し、歯に強固に付着し酸を作り出します。
2.歯の質:
歯の質が弱い、歯並びが悪い、噛み合わせがうまく合っていないと虫歯になりやすくなります。
3.食事:
歯につきやすい砂糖(糖質)を多くとると、プラーク中の虫歯菌が酸を作り出しやすくなります。
4.時間の経過:
プラーク(歯垢)が歯に付着したままになっている時間が長いほど虫歯になりやすくなります。
<虫歯の進行>
砂糖の入った食物を口に入れると、虫歯菌(ミュータンス連鎖球菌など)が砂糖からグルカンという物質を合成し歯に強固に付着します。プラーク中の虫歯菌は砂糖などの糖類を利用し酸を作り、歯が溶けはじめます。このときエナメル質の内側からカルシウムやリンが溶け出していきます。これを脱灰といいます。
そして30分くらいたつと酸が唾液で薄まり、今度は再石灰化といって唾液やプラーク中のカルシウムがエナメル質内へ戻っていきます。この脱灰と再石灰化のバランスがうまくとれている限り虫歯は発生しませんが、砂糖を口にする回数が多すぎたり、プラークが歯にたくさん沈着していたりするとこのバランスがくずれ、エナメル質の表面下からカルシウムが溶けだして空洞になってしまいます。この状態を表層下脱灰(初期う蝕)といいます。肉眼的には、まずプラークがついており、それを取り除くとプラーク下のエナメル質が白濁しています。
歯の状態 | 症状 | |
C0 | 初期の虫歯 | |
C1 | エナメル質に虫歯が発生し、歯の表面に穴があく状態 歯の表面や溝が灰白色や黄褐色、黒褐色に変化 |
痛みは感じない |
C2 | 虫歯が象牙質の中まで広がった状態 | 冷たいもの、熱いものがしみる |
C3 | 虫歯が歯髄まで進んだ状態 | 激しい痛みがある |
C4 | 歯幹部がほとんどなくなり、歯の根だけ残った状態 | 歯髄が死に、痛みはなくなる 残った歯の根の先に膿がたまることがある |
「C」:虫歯 Dental Cariesの略称
<予防>
1.甘味飲食物の過剰摂取制限
甘味食品・飲料の摂取回数が多くなるほど虫歯のリスクは高くなります。
2.歯垢の除去
歯磨きをしてプラークをためないようにすれば、効果的に虫歯予防ができます。
3.フッ化物の歯面塗布
フッ素は、特にエナメル質の酸への抵抗を高めて、虫歯をできにくくする効果があります。
虫歯予防には、フッ素入りの歯磨き剤の使用や、定期的に歯科医院でのフッ素塗布やフッ素入りのうがい薬が効果的です。
4.シーラント
奥歯のかみ合わせの面にある小さな溝の深い部分を歯と同じ色をしたプラスチックであらかじめ埋めてしまう処置方法です。
虫歯の予防効果は90%以上あります。
<日常生活の注意点>
1.正しい歯磨き:プラークを口の中から減らす(プラークコントロール)には正しい歯磨きが必要です。最低1日1回は、10分以上磨くように心がけて下さい。また、歯間ブラシやデンタルクロスなどを使うとより効果的にプラークを除去できます。
2.甘味食品・飲食の過剰摂取制限:甘味食品・飲料の摂取回数が多くなるほど虫歯のリスクは高くなるため、甘い菓子などを控えるなどの間食内容を工夫したり、時間を決めて飲食する習慣をつけて下さい。
3.フッ化物塗布:フッ素入りの歯磨き剤の使用や、定期的に歯科医院でのフッ素塗布やフッ素入りのうがい薬が効果的です。
4.定期検診:虫歯は放置しておくとどんどん進行してしまいます。早期発見・早期治療のためにも少なくとも1年に2~3回は定期健診を受けましょう。