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21.加齢黄斑変性

黄斑部が障害される加齢黄斑変性は、欧米諸国では成人の失明原因の第1位を占めており、我が国でも高齢者の主要な視力障害の原因となってきています。


加齢にともなって起きる病気なので、特に60歳以上で男性に多く、女性の約3倍の頻度でみられます。約20%には両眼に発症します。

<加齢黄斑変性とは>

網膜の中心部を黄斑部といい、直径約1.5mmで他の網膜と比べてやや黄色調であることからこの名前が付けられました。この黄斑部の働きはものを見るときに最も大切な視力の維持、色の判別を行っています。この黄斑部が加齢にともなって色々な異常をきたした状態を加齢黄斑変性といいます。この疾患のほとんどが60歳以上の人に発症しています。


加齢黄斑変性は滲出型と萎縮型に分けられます。


滲出型は急激に進行することが多く、ものを見る真ん中(中心視力)が急速に見えにくくなってきます。原因は網膜のさらに奥にある脈絡膜に、正常な血管とは別に、異常な血管(脈絡膜新生血管)が作られます。この血管は非常に出血しやすく、また、血液成分が血管の外へ漏れやすくなっているため、黄斑部に障害を起こします。


柳 靖雄:加齢黄斑変性,毎日ライフより

それに対して萎縮型は加齢に伴って徐々に組織が変性して、老廃物が蓄積して栄養不足になり萎縮していくタイプで、長い間かかって視力が低下していくため、気づかない人もいます。老化現象ですから治療法がなく、視力も急には落ちないので、あまり問題にされていませんが、時間の経過と共に新生血管が発生し滲出型に移行することもありますので、定期的に検査を受ける必要があります。 


<加齢黄斑変性の危険因子>

詳しい原因はわかっていませんが、この病的な新生血管が発生する原因として網膜色素上皮や網膜色素上皮に接する膜であるブルッフ膜(基底膜)の加齢変化(活性酸素による酸化ストレス障害)が指摘されています。この他危険因子として、遺伝、高血圧、高脂血症、白内障、亜鉛不足、環境要因としては喫煙、日光曝露が関係があると報告されています。



<加齢黄斑変性(滲出型)の進行>

網膜の中心部である黄斑部が障害されるため、ものを見ようとしたときにその中心部が最も影響を受けます。


1.初期症状
変視症・・・ものの中心部分がゆがんで見える


2.進行期の症状
中心暗点・視力低下・・・ものの中心部分が欠けて見える


網膜剥離や大きな出血が起きれば、さらに広い範囲で見えにくくなる

<治療>

萎縮型には治療法はありません。


滲出型では病気の進行度や重症度、また病型によって治療法はいくつかに分かれますが、決定打的な治療法はありません。
最近は新生血管が中心窩にある場合では、光線力学療法が主流となっています。


1. レーザー光凝固:
新生血管を直接レーザーで凝固する方法で、新生血管が中心窩外にある場合に行われる。


2. 硝子体手術:
①黄斑下手術・・・新生血管を直接除去する方法。中心窩を傷つけてしまう問題がある。
②中心窩移動術・・・網膜剥離を意図的に作成して、健常な部位に中心窩を移動させる方法。複視(ものがふたつに見える)などの副作用がある。


3. 光線力学療法(PDT;photodynamic therapy):
新生血管だけに集まりやすい光感受性物質(ベルテンポリフィン)を静脈注射し、弱レーザーを照射することで細胞を障害する活性酸素を生成させ、新生血管を退縮させる方法。


4. 経瞳孔的温熱療法(TTT;transpupillary thermotherapy):
新生血管の熱に弱い性質を利用して、弱い出力の半導体レーザーを長時間照射することで組織の温度を43度程度上昇させ、新生血管を退縮させる方法。


5. 薬物療法:
黄斑部に新鮮な出血が多いときや出血の予防のために止血剤や網膜や血管に栄養を与えるビタミンなど。また、予防目的で抗酸化作用あるビタミンA(βカロチン)、ビタミンC、ビタミンE、亜鉛などが有効だという報告がある。


<日常生活の予防・注意点>

1.禁煙:喫煙は加齢黄斑変性の危険因子とされています。


2.抗酸化物質をとる:ビタミンA(βカロチン)、ビタミンC、ビタミンEなどの抗酸化物質と亜鉛に多少の予防効果があることがわかりました。食生活でこれらを十分に摂取するように心がけて下さい。


3.高血圧や高脂血症の治療:高血圧や高脂血症は加齢黄斑変性の危険因子とされています。


4.日光から目を守る:強い光、日光が網膜に当たると、網膜に有毒物質が溜まりやすくなります。サングラスやツバ付きの帽子で目を守りましょう


5.定期検診:加齢黄斑変性は治療の難しい疾患です。早期発見、早期治療のため日頃から、ときどき片目をふさいでものの見え方に異常がないか確認をしたり、定期的に眼科医院での検診を受けてください。






(c)東海四県薬剤師会情報システム委員会

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