特定保健用食品
日本では厚生労働省が、2001年4月にいわゆる健康食品の類型化として、表示可能な内容に応じて個別に審査して許可する「特定保健用食品(トクホ)」と、ある一定の規格基準を定めて許可する「栄養機能食品」に分け、両者をまとめて「保健機能食品」という制度を作りました。
現在、保健の効果を表示できるのは特定保健用食品(トクホ)だけで、からだの生理学的機能などに影響を与える成分を含んでおり、血圧、血中のコレステロールなどを正常に保つことを助けるなどの特定の保健の効果が科学的に証明されている(国に科学的根拠を示して、有効性や安全性の審査を受けています。)食品です。
特定保健用食品一覧(消費者庁のホームページへ)
→日本人の食事摂取基準
血圧が高めの方|コレステロールが高めの方|おなかの調子を整える|
虫歯の原因になりにくい|歯を丈夫で健康にする
血糖値が気になる|中性脂肪が上昇しにくい、体脂肪がつきにくい|
ミネラルの吸収を助ける|骨の健康が気になる|
<血圧が高めの方の食品>
特定保健用食品に利用されている成分
・カゼインドデカペプチド
・バリルチロシンを含むサーデンペプチド
・かつお節オリゴペプチド
・ラクトトリペプチド(VPP、IPP)
・イソロイシルチロシン
・杜仲葉配糖体(ゲニポシド酸)
・γ-アミノ酪酸(GABA)
◆ペプチド類
ペプチドは、タンパク質を構成する最小単位のアミノ酸が2個以上、数十個ほど集まったもので*、消化吸収が早く体力が低下している状態でも栄養素が吸収される特徴があります。
高血圧によいペプチドは、牛乳や発酵乳、イワシやマグロの魚介類、コーン、米、大豆などのタンパク質を酵素分解することにより得られます。例えば、カゼインドデカペプチドは牛乳のカゼインを分解しアミノ酸12個からなり、ラクトトリペプチドは発酵乳から、サーデンペプチド(バリンとチロシンが結合)はイワシから、かつお節オリゴペプチドはかつお節からそれぞれ生成され、イソロイシルチロシンはブナハリタケエキスに含まれるイソロイシンとチロシンが結合したものです。またワカメペプチドはワカメのタンパク質を酵素分解してフェニルアラニルチロシン、バリルチロシン、イソロイシルチロシンを成分とします。
*タンパク質を構成する最小単位のアミノ酸が2個以上10個以下→オリゴペプチド
〃 2個以上100個以下→ポリペプチド
-作用-
・ACE阻害作用による血圧降下
生体内で血圧調整をおこなっているレニン・アンジオテンシン系の中で、主に肝臓から分泌されるアンジオテンシノゲンがレニンでアンジオテンシンⅠに変換され、次にアンジオテンシン変換酵素(ACE)の作用によってアンジオテンシンⅠがアンジオテンシンⅡに変換される。このアンジオテンシンⅡが強い昇圧作用を示す。
これらペプチドは、ACEの働きを阻害することにより、アンジオテンシンⅡの生成を阻害して血圧の上昇を抑制する。ただし、降圧作用はACE阻害剤より弱く(半分ほど)、穏やかな効果を示す。これは、ペプチドが消化酵素によって分解されやすいことが理由と考えられる。
アンジオテンシノゲン ↓←レニン アンジオテンシンⅠ ↓←アンジオテンシン変換酵素(ACE) アンジオテンシンⅡ ↓ 血管壁の収縮 ↓ 血圧上昇 |
-副作用・注意-
ACE阻害剤と同じ作用をすることから、以下のことに注意して使用して下さい。
1.ACE阻害剤との併用は避ける。
2.ACE阻害剤の副作用である咳(空咳)があらわれることがある。
特に、気管支喘息など呼吸器疾患のある人は注意する。
3.カリウム製剤、利尿薬(カリウム保持性利尿薬)との併用、高齢者、腎機能の低下している人に高カリウム血症が起こるおそれがある。
4.妊婦または妊娠の可能性のある婦人の使用は避ける。
◆杜仲葉配糖体(ゲニポシド酸)
杜仲は、中国の四川省に原生する落葉高木で、数千万年前から数百万年前に繁茂していましたが、杜仲は雌雄異株で、雄木の混合率は非常に低く、現在は1科1属1種しか残っていません。日本では、大正7年に渡来しており、現在、長野県で栽培されています。
杜仲葉の主成分はゲニポシド酸という配糖体で、副交感神経を刺激する働きがあります。
-作用-
・副交感神経刺激作用による血管拡張
副交感神経を刺激することにより、動脈の筋肉を刺激して血管を広げる。抵抗が減ったことにより血流の流れが良くなり、血圧が下がる。
・その他の作用
コレステロール上昇抑制
アルコールの分解促進・・・飲酒の前又は後に飲めば悪酔い、二日酔いの防止になる
コラーゲンの新陳代謝を促進
-副作用・注意-
摂り続けても副作用のない薬草とされていますが、杜仲は、カリウムを含んでいるためカリウム製剤、利尿薬(カリウム保持性利尿薬)などとの併用、高齢者、腎機能の低下している人において、高カリウム血症が起こるおそれがありますので、医師に相談して下さい。
1日の適量は6gです。コラーゲンの新陳代謝の促進作用は6g以上飲んでも変わらないので、杜仲茶の1日当たりの適量は6gと考えられています。また、空腹時に飲んだ場合に最も効果があるといわれています。
◆γ-アミノ酪酸(GABA)
γ-アミノ酪酸(GABA)は、アミノ酸の一種で、生体内ではグルタミン酸から生成され、中枢神経に多く存在する抑制性神経伝達物質です。γ-アミノ酪酸(GABA)が不足すると興奮しやすくなることなどから神経の鎮静作用を有すると考えられています。
また、末梢神経においては、血管収縮作用のあるノルアドレナリンの分泌を抑えることにより、降圧効果をもたらすと示されています。
-作用-
・末梢交感神経でのノルアドレナリン分泌抑制
末梢交感神経の亢進を抑え、血管収縮作用のあるノルアドレナリンの分泌を抑えることにより、血圧を低下させる。
・その他の作用
脳の血流改善
鎮静作用
-副作用・注意-
副作用は報告されていませんが、効果を期待して過剰に摂りすぎたりしないよう注意して下さい。
<コレステロールが高めの方の食品>
特定保健用食品に利用されている成分 ・大豆タンパク質・キトサン ・低分子アルギン酸ナトリウム ・サイリウム種皮由来の食物繊維 ・リン脂質結合大豆ペプチド(CSPHP) ・植物ステロールエステル ・植物ステロール |
コレステロールに対して利用されている成分の作用は、ほぼ同様な働きをし、その作用は医療用医薬品のイオン交換樹脂製剤(コレスチラミン、コレスチミド)に類似します。
1.胆汁酸と結合して、吸収を抑制したり、胆汁酸の排泄を促進することで、余分なコレステロールを体外に排出する。
2.肝臓でのコレステロールから胆汁酸への変換が亢進するため、コレステロールの肝臓への取り込みが増加して、血中コレステロールが低下する。
-共通の副作用・注意-
①脂溶性ビタミン(A、D、E、K)あるいは葉酸塩の吸収阻害が起こる可能性があるので、長期間投与の際にはこれらの補給を考慮して下さい。
②血液凝固阻止薬(ワルファリン)、テトラサイクリン抗生物質、精神神経薬(フェノバルビタール)、甲状腺薬、強心薬(ジギタリス)などと同時に摂ると併用薬の作用を弱めるおそれがあります。食品を摂る前1時間若しくは投与後4~6時間以上、又は可能な限り間隔を開けて併用薬を服用して下さい。
③小腸内において食物繊維は胆汁酸を吸着して、再吸収(腸管循環)させる量を減少させます。
低用量ピルは、腸管循環によってその効果が発揮できるように最低限の用量になっているため、吸収率の低下により効果が出ない危険性があります。このようなことから食品と併用することは避けて下さい。
◆大豆タンパク質
大豆は、必須アミノ酸をほぼ含む植物性タンパク質の代表的なものです。
大豆タンパク質の血清コレステロール濃度低下作用のメカニズムは、大豆タンパク質が消化される段階で疎水性の強いタンパク質加水分解物(ペプチド)ができ、腸管内で胆汁酸等と結合して吸収を抑制し、余剰ステロール類を体外に排出して、血清コレステロール濃度を正常範囲に保つことが示されています。リン脂質結合大豆ペプチド(CSPHP)はこのペプチドに同じ大豆から得られるリン脂質を結合させたものです。
-副作用・注意-
大豆アレルギーのある人は摂取しない方がいいでしょう。また、このようなタンパク質を摂る時は、動物性タンパク質と植物性タンパク質の比率に注意して下さい。目安としては同量に摂ることが望ましいので、1日40gを超えないようにして下さい。
ペプチドを使用したものでは、妊娠中の人や腎不全の人は十分に注意して下さい。
◆食物繊維
食物繊維とは人の酵素で消化されない食品の難消化成分の総体と定義され、水に溶ける水溶性繊維と水に溶けない不溶性繊維とに分けられます。共に胆汁酸の吸着作用はありますが、水溶性繊維の方が作用は強いといわれています。
摂取する際には、水分を摂る量が少ないとかえって便秘になりやすいため、十分な水分補給に心がけて下さい。また、いきなり大量の食物繊維を摂るとおなかがゴロゴロしたり、軟便、下痢を起こすことがあります。
①水溶性繊維
・低分子アルギン酸ナトリウム・・・昆布やワカメ、ヒジキなどの海藻に含まれるアルギン酸を酸と加熱することにより粘性を下げたものです。
・サイリウム種皮由来の食物繊維・・・サイリウムはオオバコ科の種皮に含まれる粘質多糖類でサイリウムガムの簡略名です。水溶性、難溶性いずれの働きも持ち、水溶性繊維としては体内でゲル状になり胆汁酸の吸着作用を発揮します。また、難溶性繊維としては水を含んで膨らみ腸の運動を活発にして便の量を増やす働きがあります。→「おなかの調子を整える食品」
併用により他の成分の吸収も阻害しますが、鉄の吸収も阻害するため鉄分の補給を心がけて下さい。また、躁病治療薬の炭酸リチウムの併用により薬剤の作用を弱めることがわかっています。
②不溶性繊維
・キチン・キトサン・・・キチンはカニやエビなどの甲殻から化学処理をして作られ、キトサンはそのキチンから作られます。キトサンは腸内細菌などの働きによりグルコサミンに分解されて腸管から吸収されます。
キトサンは、脂溶性ビタミンの吸収を阻害することもなく、大量に摂っても便や胃腸に影響を与えず、摂取したほぼ全量が便中に排出されます。
カニやエビなどにアレルギーのある人は摂取しない方がいいでしょう。
◆植物ステロール・・・植物ステロールは、植物油(米ぬか、ひまわり、コーンなど)中に含まれる脂肪以外の成分の総称で、β-シトステロール、カンペステロール、スチグマステロールなどが代表的です。
コレステロールは小腸内で胆汁酸に溶解することが必須で、胆汁酸には限られた量のステロールしか溶解できないため、構造上コレステロールに類似しており、胆汁酸に溶解する働きを持つ植物ステロールが存在すると植物ステロールがコレステロールに置き換わり、相対的にコレステロールの溶解量が減少し、吸収が抑制されます。
植物ステロールは、β-カロチンの吸収を抑制することがあるので、果物、野菜類とともに摂ると良いでしょう。また、血中コレステロール値への効果が現れるのは、2~3週間からとみられますが、定期的に食べ続ける必要があり、止めると3週間以内に元のコレステロール値に戻ってしまいます。
また、高エネルギー食品であるため、過剰に摂ると逆に肥満や高脂血症を引き起こすことになりますので、食事全体のバランスを考えて摂るようにして下さい。
<おなかの調子を整える食品>
特定保健用食品に利用されている成分 《オリゴ糖類を含む食品》 |
おなかの調子を整えるために利用されている成分は、続けて摂ることにより大腸の働きを正常化する作用があります。
◆オリゴ糖
「オリゴ」とはギリシャ語で「少ない」という意味で、ブドウ糖(グルコース)などの単糖*が2~10個結合したもので、大半は難消化性で胃や小腸で吸収されずに大腸に達します。特定保健用食品に使用されているオリゴ糖はいずれも難消化性のものです。
*単糖
単糖類:ブドウ糖、果糖(フルクトース)、マンノース、ガラクトースなど
二糖類:麦芽糖(マルトース)、ショ糖、乳糖(ラクトース)、トレハロース、イソマルトース
炭 水 化 物 |
糖質 (消化されるもの) |
糖類 | 単糖類 二糖類 |
糖 | オリゴ糖 | ||
糖アルコール | 単糖アルコール 2糖アルコール ≧3糖アルコール |
||
多糖 | でんぷん | ||
食物繊維 (消化されないもの) |
水溶性食物繊維 | ペクチン質、植物ガム、海藻など | |
不溶性食物繊維 | セルロース、イヌリン、キチンなど |
糖質(糖):
アルデヒド基(-CHO)またはケト基(>C=O)をもつ多価アルコール(-OH基が複数あるアルコール)のことをいい、一般にCm(H2O)nの式であらわす。
糖類:
栄養表示基準では、糖類とは、糖質のうち単糖類(ブドウ糖など)と二糖類(ショ糖、乳糖)であって、糖アルコール(マルチトール、エリスルトールなど)を除いたもの。
・キシロオリゴ糖・・・食物繊維に加水分解酵素を作用させて作る。カルシウムや鉄などのミネラルの吸収を促進する。下痢に対する最大無作用量は体重1kg当たり約1.3g。
・フラクトオリゴ糖・・・アスパラガス、ニンニク、ゴボウ、タマネギなどの野菜類やハチミツに少量含まれている。下痢に対する最大無作用量は体重1kg当たり男性0.3g、女性0.4gである。カルシウムや鉄、マグネシウムなどのミネラルの吸収を促進する。
・大豆オリゴ糖 ・・・大豆に含まれる糖類の総称。直射日光を避け涼しいところに保存する。
・イソマルトオリゴ糖・・・でんぷんを原料として生産され、酵母により分解されず、清酒、味噌、ハチミツに含まれる。下痢に対する最大無作用量は体重1kg当たり約1.5g。
・乳果オリゴ糖・・・ショ糖と乳糖から作られる。カルシウムや鉄などのミネラルの吸収を促進する。下痢に対する最大無作用量は体重1kg当たり約0.6g。
・ラクチュロース・・・二糖類で天然には存在しない。乳糖をアルカリ性で処理して作られる。
・ガラクトオリゴ糖・・・母乳、牛乳の初乳中に含まれる。カルシウムや鉄などのミネラルの吸収を促進する。下痢に対する最大無作用量は体重1kg当たり約0.3g。
・ラフィノース・・・砂糖大根(甜菜)から分離精製される、三糖類のオリゴ糖。下痢に対する最大無作用量は個人差が大きいが、1日約3g(成人)。
・コーヒーオリゴ糖・・・完全に抽出しきっていないコーヒー粕を由来とする天然オリゴ糖。1日2杯が目安。
-作用-
胃や小腸で吸収されずに大腸に達したオリゴ糖は、善玉菌(乳酸菌など)のエサになり、善玉菌が増えることにより作り出された酢酸や乳酸などにより腸内は酸性になります。悪玉菌(大腸菌など)は酸性が苦手なので増殖ができず、腸内環境が浄化され、下痢を防ぐことになります。また、この酸が大腸壁を刺激して腸の蠕動を促し、便秘を解消してくれます。
-副作用・注意-
副作用は、認められませんが、摂取により軟便化することがあるので、調子をみながら摂って下さい。
◆乳酸菌
乳酸菌はオリゴ糖などの糖を分解して乳酸や酢酸を作り出す菌の総称です。菌の形から球状のものを乳酸球菌、棒状のものを乳酸桿菌、また、酸素の有無にかかわらず増殖する乳酸球菌、乳酸桿菌と酸素があるところでは生育できないビフィズス菌などの分け方があります。医薬品や食品の分野では乳酸桿菌、ビフィズス菌が多く使われているようです。
腸内のビフィズス菌を増やすことが大切ですが、ビフィズス菌は酸に弱く、そのまま食べると腸まで届かずほとんど死滅してしまいます。
乳酸菌飲料やヨーグルトを毎日摂取していても、ほとんどのビフィズス菌は胃の中で死んでしまい、腸内に定着・増殖することができないわけです。そこで、生きたままビフィズス菌を直接腸まで届けるように、腸で溶ける腸溶性カプセルの薬剤や食品(ラクトバチルスGG株、ビフィドバクテリウム、ロンガムBB536他)ができました。
-作用-
ビフィズス菌をはじめとする乳酸菌の整腸作用がどの様な機序で効果を示すのかは不明ですが、増殖に伴い産生する乳酸や酢酸が腸の蠕動を促進し、正常な便通を促すものと考えられます。また、腸内が酸性になることから、カルシウムや微量元素は酸に溶けて腸から吸収されやすくなります。
-副作用・注意-
商品は乳製品としてのものが多いため、含有されているカルシウムと医薬品(テトラサイクリン系抗生物質、ニューキノロン系抗菌薬)との相互作用に注意しなくてはいけません。これらの薬剤はカルシウムと同時摂取することで消化管内で難溶性のキレートを形成して、薬剤の吸収が低下し、効果が減弱されるおそれがあります。同時摂取はおこなわず、2~4時間程度時間をずらして摂って下さい。
また、乳製品が多いことから、保管温度に気をつけ、開封後は早めに摂取して下さい。
*抗生物質耐性乳酸菌製剤:
抗生物質は善玉菌、悪玉菌の区別なく、腸内細菌まで殺してしまうため腸内細菌のバランスが乱れ、下痢を起こしやすくします。そのため抗生物質に抵抗力を持つ乳酸菌を抗生物質と一緒に服用することによって、抗生物質によって死滅してしまう善玉菌を補い、下痢を予防します。
・プロピオン酸菌による乳清発酵物(乳清タンパク)・・・スイスチーズ由来のプロピオン酸菌で発酵させた液体素材。成分中には、ビフィズス菌増殖促進物質が含まれており、この働きによりビフィズス菌が増加し、大腸の働きを正常化する。
◆食物繊維
水溶性、難溶性いずれの食物繊維も胃や小腸の消化酵素では分解されず、そのまま大腸に達し、ともに便通を改善する働きを示します。
①難溶性食物繊維
・サイリウム種皮由来の食物繊維(水溶性、難溶性いずれの働きをもつ)・・・難溶性食物繊維が水分を吸収すると30~40倍に膨らみます。月経時および貧血気味の人は鉄分の補強をして下さい。→「コレステロールが高めのな方の食品」
・ビール酵母由来の食物繊維・・・ビール酵母細胞壁は90%程度が難消化性の多糖およびタンパク質で構成されています。大量に摂取しても下痢などの副作用は出ていません。
・寒天由来の食物繊維・・・寒天の中に含まれる食物繊維で、体内では消化吸収されにくいです。直射日光、高温多湿の場所を避けて、冷暗所に保管して下さい。
②水溶性食物繊維
・難消化性デキストリン・・・難溶性のでんぷん粉末を加水分解して水溶性にして、さらにアミラーゼで加水分解、イオン樹脂で脱塩、脱色して作られます。
・グアーガム分解物(ガラクトマンナン)・・・インド、パキスタン地方に生育する豆科植物グアー(Cyamopsis tetragonoloba)の種子を原料とするグアーガムを酵素(ガラクトマンナナーゼ)で分解・精製したものです。一般に増粘安定剤や乳化剤といった食品添加物として広く利用されてきました。
・ポリデキストロース・・・人工的にブドウ糖とソルビトールを9:1で混ぜてクエン酸を加えて加熱して合成されます。下痢に対する最大無作用量は体重1kg当たり約0.3g。
-作用-
・難溶性食物繊維・・・腸内細菌では分解されず、排便量を増やすことで腸の蠕動運動を刺激して便秘を改善します。
・水溶性食物繊維・・・腸内細菌のエサになり、善玉菌が増えることにより作り出された酢酸や乳酸などにより腸内は酸性になります。悪玉菌は酸性が苦手なので増殖ができず、腸内環境が浄化され、下痢を防ぐことになります。また、この酸が大腸壁を刺激して腸の蠕動を促し、便秘を解消してくれます。
-副作用・注意-
摂取する際には、水分を摂る量が少ないとかえって便秘になりやすいため、十分な水分補給に心がけて下さい。また、いきなり大量の食物繊維を摂るとおなかがゴロゴロしたり、軟便、下痢を起こすことがあります。
腸管平滑筋の攣縮による痙攣性便秘では、症状がかえって悪化する危険性がありますので、便秘の症状に合わせて摂取するようにして下さい。
薬剤併用により、ジギタリス製剤、カルシウムや鉄製剤、脂溶性ビタミン(A、D、E、K)の吸収が抑制される可能性がありますので注意して下さい。
<虫歯の原因になりにくい食品>
特定保健用食品に利用されている成分 《虫歯菌の栄養源になりにくい成分》 |
むし歯をつくるミュータンスレンサ球菌は、口に砂糖が入ってくると酵素を使って粘っこい不溶性グルカンをつくり、歯の表面に強く付着して歯垢を形成します。歯垢にはこの菌や他の細菌が棲み、砂糖などの糖分を使い乳酸や酢酸などの有機酸を発生させます。これにより歯垢のpHの値が約5.7以下に下がるとカルシウムやリンでできている歯のエナメル質表面が溶け出し(脱灰)、穴が開くということになります。
・パラチノース・・・サトウキビやハチミツなどにも微量に含まれるが、人工的に砂糖を原料に微生物を用いて発酵させて作る。二糖類の一種で甘味料として用いられている。
なお、パラチノースというのは商品名で、三井製糖の登録商標で、物質名はイソマルツロース
◆糖アルコール
糖アルコールは、 ブドウ糖や果糖などのアルデヒド基(-CHO)を持つ糖を還元し、末端をアルコール(-CH2OH)に変化させた水素が2つくっついた化合物の総称で、砂糖と異なりミュータンスレンサ球菌に利用されず、歯垢も有機酸もつくらず、菌の増殖を抑え、むし歯の予防に役立ちます。
糖の多くは酵素によって最小単位(単糖)まで分解され小腸で吸収されるが、分解されない糖アルコールはそのままの形で大腸まで達するため、一般に低カロリー、難消化性、非う触性(虫歯の原因になりにくい)及び血糖値の急激な上昇を引き起こさないなどの生理的特性や、熱、酸およびアルカリに強いなどの加工特性をもちます。
・マルチトール・・・でんぷんを酵素処理し、水素を添加して作られる。難消化性糖質のため、一度に大量に摂ると下痢を起こす可能性がある。下痢に対する最大無作用量は体重1kg当たり約0.3g。
・エリスリトール・・・ワインや味噌などの酵母発酵食品やスイカに存在しているが、人工的にブドウ糖を発酵させて作る。糖アルコールの中では、下痢になりにくく、ノンカロリー。
・還元パラチノース(パラチニット)・・・パラチノースに水素を添加して作られる。下痢に対する最大無作用量は体重1kg当たり約0.3g。
〔参考〕
砂糖に対する 甘味度(%) |
カロリー (kcal/g) |
甘味 | |
砂糖(ショ糖) | 100 | 4 | - |
パラチノース | 37~45 | 4 | 砂糖とよくにた甘味 |
<オリゴ糖> | |||
フラクトオリゴ糖 | 30~60 | 2 | 砂糖とよくにた甘味 |
ガラクトオリゴ糖 | 20~40 | 2 | さわやかな甘味 |
キシロオリゴ糖 | 40~50 | 2 | さわやかな甘味 |
イソマルトオリゴ糖 | 30~55 | 4 | まろやかな甘味 |
大豆オリゴ糖 | 70~75 | 3 | あっさりした甘味 |
ラフィノース | 22 | 2 | さわやかな甘味 |
乳果オリゴ糖 (ラクトスクロース) |
50~80 | 2 | 砂糖とよくにた甘味 |
<二糖類アルコール> | |||
マルチトール | 60~80 | 2 | 砂糖とよくにた甘味 |
ラクチトール | 30~40 | 2 | すっきりした甘味 |
パラチニット | 45~60 | 2 | |
<単糖類アルコール> | |||
エリスリトール | 75~85 | 0 | 冷感のある、 あっさりした甘味 |
ソルビトール | 60~70 | 3 | さわやかな甘味 |
マンニトール | 60~70 | 2 | |
キシリトール | 100 | 3 | さわやかな甘味 |
◆茶ポリフェノール
ポリフェノールとは、同一分子内に複数のフェノール性水酸基(-OH)をもつ植物成分の総称で、ほとんどの植物に含有され、その数は5000 種以上に及ぶといわれています。光合成によってできた植物の色素や苦味の成分(カテキンなど)であり、抗酸化能力に優れた水溶性(一部は脂溶性)物質です。
-作用-
むし歯原因菌ミュータンスレンサ球菌の増殖を抑制し、さらに不溶性グルカン合成の阻害、菌体の歯面への付着を防止する働きをもちます。
・その他の作用
消臭作用
コレステロール吸収阻害と脂質酸化抑制作用
抗菌、抗ウイルス、解毒効果
抗酸化作用
糖質・脂肪の吸収阻害効果
-副作用・注意-
緑茶は長い間多くの人に飲まれてきたことから、茶ポリフェノールの安全性は高いと考えられます。
〔参考〕
ポリフェノールの種類 含まれる食物・期待される効果 アントシアニン 赤ワイン、ぶどうやりんご、ブルーベリーなど赤紫系のフルーツに含まれている色素の一つで、肝機能向上に効果があるといわれている。 カカオマスポリフェノール(CMP) ココアやチョコレートなどカカオ豆に含まれているもので、活性酸素の活動を抑え、動脈硬化、ガン、アレルギー、胃潰瘍などの予防にも効果があるといわれている。 ウーロン茶ポリフェノール ウーロン茶特有の成分で、脂肪分解を促進する効果があるといわれている。 グァバ葉ポリフェノール グァバ葉特有の成分で、糖質をブドウ糖に変える酵素の働きを阻害し、血糖値の上昇を抑える。 カテキン お茶以外にもワインやりんご、ブルーベリーやれんこんにも含まれていて、殺菌作用をもつといわれている。 タンニン お茶だけでなく、柿やバナナにも含まれている。 イソフラボン 豆腐や納豆などの大豆製品にも含まれている。構造式が女性ホルモンに似ているので、女性特有の悩みに効果がある。女性ホルモンの乱れから生じる肌荒れ、冷え性などの症状や、更年期障害による肩こりなどにも有効。 ルチン ビタミンPとも呼ばれる。そば特有の成分で、毛細血管の強化、記憶力を向上させる効果をもつといわれている。 ケルセチン 玉葱やほうれん草、ブロッコリー、春菊といった個性の強い野菜に含まれている。ガンの予防にも効果があるといわれている。 クロロゲン酸 プルーンやじゃがいも、春菊に含まれていて、発ガン物質除去作用があるといわれている。
<歯を丈夫で健康にする食品>
特定保健用食品に利用されている成分 《 歯の再石灰化を促進する成分 》 |
キシリトールは、シラカバやカシなどの木材に含まれる、多糖キシランを分解して得られる木糖(キシロース)を高圧条件で還元した、腸で消化されにくい単糖類の糖アルコールで、ミュータンスレンサ球菌などのむし歯(う蝕)原因細菌に利用されない甘味料です。
特徴としては、①虫歯を誘発しない ②ショ糖に比べて甘味度が低い ③血糖値を急激に上げない ④ショ糖やブドウ糖に比べて低カロリー 等が挙げられます。
ただし、一度に大量に摂ると、体質によりおなかがゆるくなることがあります。
キシリトールとフクロノリ抽出物はカルシウムと複合体を形成し、カルシウムの運び屋として唾液による(唾液にはカルシウムとリン酸塩が存在する)再石灰化*を促進させます。
リン酸一水素カルシウムやカゼインホスホペプチド-非結晶リン酸カルシウム複合体は、再石灰化の促進を助けるためのカルシウムとリン酸の供給をします。カゼインホスホペプチドは牛乳タンパクカゼインの酵素消化物から得られるため、牛乳アレルギーの人は注意が必要です。また、一度に大量に摂ると、体質によりおなかがゆるくなることがあります。
*再石灰化:
歯牙表面のpHが約5.7以下になると、歯を構成するハイドロアパタイトの結晶構造からカルシウムやリン酸などが溶け出していくことを脱灰という。これを長期間繰り返すことにより虫歯が発生する。しかし、脱灰が起こっても中性の環境下では、唾液中のリン酸やカルシウムがそこに沈着して結晶構造を回復させる。これを再石灰化という。
歯の表面 ● ○ ● ○● ○
○ ○ ● ○ ●
●○●○●○ →脱灰 ○ ● ● →脱灰 ● ○
○●○●○● ←再石灰化 ●○●○●○ ○ ● ●Ca2+
●○●○●○ ○●○●○● <初期虫歯> ●○●○●○ <虫歯> ○PO43-
<血糖値が気になり始めた人>
特定保健用食品に利用されている成分
・難消化性デキストリン
・グァバ葉ポリフェノール
・小麦アルブミン
・L-アラビノース
・豆鼓エキス
血糖値に対しての食品の働きは、糖を分解する酵素の作用を阻害して、糖質の吸収を遅らせて食後の血糖値の上昇を抑制する効果を期待しています。この作用は、医療用医薬品糖尿病治療薬α-グルコシダーゼ*阻害薬と類似しています。
*α-グルコシダーゼ:
α-グルコシダーゼとは、マルターゼ、イソマルターゼ、スクラーゼ、ラクターゼなどの総称で、二糖類、三糖類を単糖に加水分解する。
糖質 | → | 消化酵素 | → | 二糖類、三糖類 | → | α-グルコシダーゼ | → | 単糖類 |
でんぷん | → | α-アミラーゼ | → | マルトース | → | マルターゼ | → | ブドウ糖・ブドウ糖 |
→ | マルトトリオール | → | マルターゼ | ブドウ糖・ブドウ糖・ブドウ糖 | ||||
→ | イソマルトース | → | イソマルターゼ | → | ブドウ糖・ブドウ糖 | |||
ショ糖 | → | ショ糖 | → | スクラーゼ | → | 果糖・ブドウ糖 | ||
乳糖 | → | 乳糖 | → | ラクターゼ | → | ガラクトース・ブドウ糖 |
-共通の副作用・注意-
糖の分解を阻害する作用から考えて、食事直前か食事と同時に摂ることが効果的です。これらを摂った後、または血糖降下作用のある薬剤と併用して、冷や汗、強い空腹感などの低血糖症状があらわれた場合は、速やかにブドウ糖を補給して下さい。また、未消化の糖質が腸管内で発酵して腸管内ガスの増加やおなかが張るなどの副作用が起こることがあります。以前に開腹手術を受けたことのある人は注意して下さい。
大量に摂取したからと疾病が治りものではありませんから、糖尿病の治療中の人、血糖値異常を指摘されている人は、医師に相談してから使用して下さい。また、大量摂取により、軟便、下痢を起こすことがあります。
◆ポリフェノール(グァバ葉)
グァバはフトモモ科バンジロウ属の常緑樹で、熱帯、亜熱帯地方に広く自生しています。その実はジュースやジャムに使われ、葉は糖尿病、下痢止め、歯痛、口内炎、胃潰瘍などに効果があるといわれ使用されていました。葉を熱水抽出したグァバ葉ポリフェノールは、タンニンを多く含むポリフェノール化合物です。
-作用-
血糖値上昇抑制作用は、小腸内の酵素であるマルターゼ(麦芽糖分解酵素)、スクラーゼ(ショ糖分解酵素)、アミラーゼ(でんぷん分解酵素)を阻害して、糖質の吸収を遅らせて食後の血糖値の上昇を抑制します。
◆小麦アルブミン
小麦アルブミンは、小麦粉から水溶性タンパク質を抽出、精製したものです。
-作用-
生体内の唾液と膵液中のアミラーゼ(でんぷん分解酵素)の働きを阻害することで、糖質の吸収を遅らせ食後の血糖値の上昇を抑制します。
-副作用・注意-
水溶性タンパク質のため小麦アルブミン自体も2時間ほどで消化・吸収されてしまうため効果は長続きしません。そのため食事直前か食事と同時に摂ると、食後1時間ぐらいに起こる血糖値上昇ピークまでにはうまく働くことになります。
◆L-アラビノース
L-アラビノースは、トウモロコシ、米などの穀物、甜菜(砂糖大根)、リンゴなどに含まれる単糖の一種で、植物の細胞壁をつくる成分です。
-作用-
砂糖をL-アラビノースと一緒に摂ると、消化酵素の中からスクラーゼ(ショ糖分解酵素)の働きだけを阻害し、砂糖の分解・吸収を抑えます。
L-アラビノース自体も分解されず、残った砂糖と共に大腸まで行き、食物繊維と同様な働きをして便秘の改善、コレステロール値の上昇を抑えます。
-副作用・注意-
大量に摂った場合におなかがゆるくなることがあります。
◆豆鼓エキス
豆鼓エキスは、大豆の発酵物である豆鼓*から抽出した天然の成分で、糖の吸収を穏やかにし血糖値の上昇を抑える効果が期待できる。
*豆鼓(とうち):
中華料理の素材で「トウチ」という中国納豆(蒸した大豆を塩漬けにして発酵、乾燥させたもの)。マーボ豆腐やトウチジャンに隠し味として使用されている。現在も京都の一休寺納豆、大徳寺納豆として知られている。
-作用-
豆鼓エキス中に含まれている「豆鼓トリス」がα-グルコシダーゼだけを阻害することにより、糖の吸収を遅らせ、血糖値上昇を抑える。
-副作用・注意-
糖尿病治療薬α-グルコシダーゼ阻害薬と類似しているため、糖尿病の治療中の人やα-グルコシダーゼ阻害薬を服用している人は、医師に相談して下さい。また、未消化の糖質が腸管内で発酵して腸管内ガスの増加やおなかが張るなどの副作用が起こることがあります。以前に開腹手術を受けたことのある人は注意して下さい。
◆難消化性デキストリン
→「おなかの調子を整える食品」
-作用-
水溶性食物繊維である難消化性デキストリンは、砂糖やでんぷんと一緒に摂ると、胃の水分で膨らみ、胃から腸へ進むスピードを遅らせ、また、小腸では粘りのあるゲル状となって食物の拡散を妨げ、分解酵素が食物と接触しにくくなります。これらのことから糖質の消化・吸収を遅らせ、食後の血糖値の上昇を抑制します。
<食後の血中中性脂肪が上昇しにくい食品、体脂肪がつきにくい食品>
特定保健用食品に利用されている成分 ・ジアシルグリセロール |
◆ジアシルグリセロール
油の成分であるトリアシルグリセロールは、グリセリンに3本の脂肪酸がエステル結合しているのに対して、ジアシルグリセロールはトリアシルグリセロールから脂肪酸を1つとった、2本の脂肪酸が結合したもので、すべての食用油に1~10%存在しています。
ジアシル グリセロール |
トリアシル グリセロール |
その他 | |
綿実油 | 9.5 | 87.0 | 3.5 |
パーム油 | 5.8 | 93.1 | 1.1 |
オリーブ油 | 5.5 | 93.3 | 1.2 |
コーン油 | 2.8 | 95.8 | 1.4 |
サフラワー油 | 2.0 | 95.6 | 2.4 |
ラード | 1.3 | 97.9 | 0.8 |
大豆油 | 1.0 | 97.9 | 1.1 |
ナタネ油 | 0.6 | 96.8 | 2.4 |
-作用-
食事として摂取されたトリアシルグリセロールは、膵臓から出た消化酵素リパーゼにより小腸で2-モノアシルグリセロールとなって吸収され、小腸上皮細胞内でトリアシルグリセロールに再合成され、カイロミクロンに取り込まれて、血中中性脂肪として全身に行き渡ります。一般に油を含む食事を摂ると、血中の中性脂肪が一時的に上昇することになります。その後、エネルギーとして利用されなかった中性脂肪は体脂肪として蓄積されます。
一方、ジアシルグリセロールは消化酵素リパーゼにより、主成分である1,3-ジアシルグリセロールまで分解されますが、消化生成物として2-モノアシルグリセロールを生成しないため、小腸上皮細胞内のトリアシルグリセロール合成酵素系の基質が不足し、トリアシルグリセロールへの再合成の量が少なくなることから、血中中性脂肪値の増加が抑えられると考えられます。
-注意-
大量摂取により病気が治ったり、より健康が増進するものではありません。
ジアシルグリセロールの機能をより発揮するためには、1日の摂取エネルギーを1800~1900kcal、摂取量は10~12.5g/日にコントロールする必要があります。
◆グロビン蛋白分解物
グロビン蛋白分解物は、赤血球に含まれるヘモグロビンの構成成分であるグロビンというタンパク質を酵素分解して得られた、オリゴペプチドの混合物です。オリゴペプチドとは、タンパク質の構成成分であるアミノ酸が2~9個つながった物です。
-作用-
食事として摂取された脂肪は、膵臓から分泌される消化酵素リパーゼにより小腸で分解され、血中中性脂肪として全身に行き渡ります。
グロビン蛋白分解物の働きは
1.脂質の吸収を抑える:
膵リパーゼの働きを抑制し、中性脂肪の吸収を抑えます。
2.脂質の代謝の活性化:
インスリンの働きを活発にすることによって中性脂肪を代謝する酵素(リポタンパクリパーゼ、肝性トリグリセリドリパーゼ)を活性化します。これにより食後の中性脂肪やレムナント様リポ蛋白が速やかに代謝されます。
3.脂肪細胞の増殖を抑える:
体内で脂肪をためている脂肪細胞を作りにくくすることにより、体脂肪の増加を抑えます。
-注意-
脂肪の多い食事の場合、食後1時間以内に摂るのが効果的です。
◆中鎖脂肪酸
中鎖脂肪酸は炭素数が8~12個の飽和脂肪酸*です。普通の植物油に含まれている脂肪酸(長鎖脂肪酸)の炭素数(通常18個程度)に比べると約半分くらいの長さの短い脂肪酸で、母乳、牛乳、乳製品の脂肪分には3~5%、ヤシ油、パーム核油などには5~10%程度の中鎖脂肪酸が含まれています。ノニという熱帯植物(日本名ヤエヤマアオキ)にも含まれています。
*飽和脂肪酸:
脂肪酸は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられ、不飽和脂肪酸は一価脂肪酸と多価脂肪酸とに分けられます。
脂肪は炭素(C)が鎖のように繋がっていて、それぞれの炭素に水素が2つずつ付いたものを飽和脂肪酸といい、一部の炭素が二重結合して(-C=C-)水素の数が少なくなっているものを不飽和脂肪酸といいます。この二重結合の1つのものを一価不飽和脂肪酸、2つ以上のものを多価不飽和脂肪酸といいます。
飽和脂肪酸は肉の脂やバターなどの動物性脂肪に多く含まれ、固まりやすく悪玉コレステロールや中性脂肪を増やす原因になります。一方、一価不飽和脂肪酸はオリーブオイルやナタネ油などの植物油脂に多く含まれ、固まらず液体を保ち、善玉コレステロールを増やします。多価不飽和脂肪酸のリノール酸とα-リノレン酸は体内で合成することができないので必須脂肪酸といわれます。
脂肪酸の種類 | 特徴 | |||
脂肪酸 | 飽和脂肪酸 | 脂肪酸の炭素に水素が2つずつ付いたもの(二重結合をもたない)。コレステロールを増やす。常温で固まっている。肉類、バター、ベーコン、ソーセージなど動物脂肪に多く含まれ、パーム油、やし油などの一部植物油にも含まれる。パルミチン酸、ステアリン酸など。 | ||
不飽和脂肪酸 | 脂肪酸の炭素が二重結合をしている。コレステロールを減らす。常温でサラサラしている。 | |||
一価不飽和脂肪酸 | 不飽和脂肪酸のうち二重結合を1つもつもの。善玉コレステロールを増やす。 オリーブ油、菜種油、紅花油などに多く含まれる。 |
|||
多価不飽和脂肪酸 | 不飽和脂肪酸のうち二重結合を2つ以上もつもの。 | |||
n-3(ω-3)系 | 多価不飽和脂肪酸のうち最初の二重結合がメチル末端から数えて3番目にあるもの。菜種油、大豆油、しその実油などに多く含まれるα-リノレン酸や青魚に多く含まれるイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)がある。 | |||
n-6(ω-6)系 | 多価不飽和脂肪酸のうち最初の二重結合がメチル末端から数えて6番目にあるもの。サフラワー油、ひまわり油、ごま油、米ぬか油などに多く含まれるリノール酸がある。 |
日本人の食事摂取基準2005年版では、n-3系多価不飽和脂肪酸の摂取目標値を50~69歳では男性2.9g/日以上、女性2.5g/日以上としている。
-作用-
普通の植物油に含まれる脂肪酸(長鎖脂肪酸)は、体内に吸収された後、リンパ管、静脈を通って脂肪組織、筋肉、肝臓に運ばれて蓄積され、必要に応じて分解されエネルギーとなります。それに比べ中鎖脂肪酸は、消化吸収が約4倍速く、門脈を経て直接肝臓に運ばれ、速やかに分解されてエネルギーとなるため、体内に蓄積しません。
中鎖脂肪酸 | 長鎖脂肪酸 | |
炭素数 | 8~10個 | 通常18個 |
吸収特性 | 早い | ゆっくり |
分解特性 | 肝臓ですばやく分解 | 吸収後必要に応じて分解 |
蓄積性 | 蓄積しない | 過剰分が蓄積する |
摂取量の目安として、普段使用の食用油と同じ量(1日当たり14g程度、中性脂肪酸量として1.6g)で使用できる。
◆EPA・DHA
EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)はマグロ、イワシ、サバなど青魚に含まれている不飽和脂肪酸で、体内で合成できないため人にとって欠かすことのできない必須脂肪酸です。
魚やアザラシを多く食するイヌイットの人達に虚血性心疾患や動脈硬化が少ないことから魚や海獣の脂肪には血液を固まりにくくする作用があることがわかりました。
・EPA(エイコサペンタエン酸)・・・血液中の悪玉コレステロールや中性脂肪値を下げ、また善玉コレステロール量を増やし、血液をきれいにする働きがあることが知られています。特に血液を固まりにくくする働きが優れているといわれています。
・DHA(ドコサヘキサエン酸)・・・主に脳や神経系の組織で働き、脳を活性化させ、記憶力の向上と老人性痴呆症の予防によいといわれています。また、血液中の中性脂肪を低下させ、悪玉コレステロールを減らすので、生活習慣予防に役立ちます。
-注意-
EPAは血液凝固を防ぐので、過剰に摂りすぎると血が止まりにくくなります。魚などの食品で摂る場合は心配はありませんが、サプリメントとから摂る場合は表示されている摂取量を守って下さい。また、EPAやDHAは酸化されやすいので、抗酸化物質のビタミンCやE、β-カロチンなどと一緒に摂ると良いでしょう。サプリメントの保存には密封容器に入れるなどして、酸化に注意して下さい。
<ミネラルの吸収を助ける食品>
特定保健用食品に利用されている成分
・CCM(クエン酸リンゴ酸カルシウム)
・CPP(カゼインホスホペプチド)
・ヘム鉄
・フラクトオリゴ糖
◆CCM(クエン酸リンゴ酸カルシウム)
CCMは、カルシウム(Calcium)、クエン酸(Citric Acid)、リンゴ酸(Malic Acid)の頭文字を取ったもので、これらを一定の比率で配合しており、さらにカルシウムの(酸性が強い胃では溶けるが、中性からアルカリ性の腸では溶けにくい)弱点を改善し酸性からアルカリ性まで広範囲で溶けるようにされています。そのため食品の中では、牛乳よりもカルシウムの吸収がよいとされています。
またCCMは、カルシウムと鉄と一緒に摂るとカルシウムが鉄の吸収を阻害するという作用をやわらげます。
-注意-
食事と一緒に摂ることにより、カルシウムの吸収が高まりますが、他の食品からの摂取量を考えて、過量の摂取はしないようにして下さい。また、カルシウムを含んでいる食品なので、テトラサイクリン系、ニューキノロン系抗菌薬と難溶性のキレートを作り、相互の吸収を阻害することがあるため、両者の摂取時間を2時間程度ずらし、同様に骨粗鬆症治療薬のビスホスホネート系製剤においては薬剤の服用後少なくとも30分経ってから摂取して下さい。
ビタミンD3製剤との併用は、高カルシウム血症を引き起こすおそれがあります。
◆CPP(カゼインホスホペプチド)
牛乳タンパク質のカゼインに酵素を作用させて得られたもので、カルシウムとリンなどが結合してできる不溶性塩の生成を防止し、カルシウムが吸収しやすい状態にして、小腸下部での溶解性カルシウムの量を増加させます。酸性条件下では安定性が高いが、アルカリ条件では成分のホスホセリンのリンがはずれてしまい効果を失います。
-注意-
カルシウムは含有していないため、CPPの単独使用では意味がありません。カルシウムなどと一緒に摂ることにより効果が発揮されます。
牛乳タンパク質のカゼインから得られているため、牛乳アレルギーの人の使用は避けて下さい。
◆ヘム鉄
→「ミネラル-鉄」
食品に含まれる鉄には、肉や魚などの動物性食品に多いヘム鉄と、野菜や穀類に含まれる非ヘム鉄があり、特定保健用食品に使われているヘム鉄は、畜肉動物のヘモグロビンから精製されたものです。ヘム鉄の吸収率は15~25%ですが、非ヘム鉄は2~5%しかありません。非ヘム鉄はビタミンCと一緒に摂ると吸収率が高まります。
食前・食後の緑茶・コーヒー・紅茶に含まれるタンニンが鉄の吸収を悪くしますが、鉄剤やサプリメント食品(ヘム鉄ゼリーなど)で鉄分を摂取する場合は、鉄の量も多く、吸収も高まっているので、お茶を控える必要はありません。
この他にジュースや加工食品に含まれるリン酸、野菜の中のシュウ酸も鉄分の吸収を妨げます。
◆フラクトオリゴ糖
→「おなかの調子を整える食品」
フラクトオリゴ糖は難消化性のため大腸まで到達して、大腸内を酸性にしてカルシウムを溶かし、吸収を助けます。
カルシウムの吸収の低い人には吸収を促進し、高い人には促進作用を示さないため、過剰摂取による高カルシウム血症を引き起こす心配はありません。
-注意-
大量に摂った場合におなかがゆるくなることがあります。
<骨の健康が気になる人>
特定保健用食品に利用されている成分 ・大豆イソフラボン |
◆大豆イソフラボン
イソフラボン*はマメ科の植物に含まれており、ことに大豆の発芽する部分「胚芽」に20%程存在する、フラボノイド系化合物です。
*イソフラボン:
イソフラボンは、糖がついているかどうかで2つに分けます。煮豆や納豆、豆腐などに含まれる通常のイソフラボンは、糖がついている分子量の大きなイソフラボンで、これを「グリコシド型イソフラボン」といいます。一方、糖がはずれている分子量の小さなイソフラボンを「アグリコン型イソフラボン」といいます。これらは、体内への吸収性がまったく異なります。
グリコシド型イソフラボンは、摂取しても、腸内細菌の酵素によって糖がはずれアグリコン型にならなければ吸収できません。一方アグリコン型は、あらかじめ糖がはずれているため、腸内細菌の働きに関係なく胃からすばやく吸収され、吸収率もグリコシド型に比べてはるかに高く、大豆食品の中では「味噌」だけが、麹菌の酵素によってあらかじめ糖が分解されたアグリコン型になっています。
「グリコシド型」と「アグリコン型」のイソフラボンのうち「アグリコン型」のイソフラボンは、女性ホルモンのエストロゲンと分子構造が似ており、体内に吸収されるとエストロゲンに似た作用をし、エストロゲンが減少することで生じる更年期の様々な症状を緩和する作用が期待できます。
-作用-
大豆イソフラボンは女性ホルモン様の作用(女性ホルモンの1/1000~1/10000)があり、植物性エストロゲンとして知られています。
エストロゲンは、骨を壊す破骨細胞の働きをコントロールし、カルシウムが過剰に溶け出すのを防ぐとともに、骨形成を促進する働きがあります。女性は閉経を境にエストロゲンの分泌が減少するため、骨からカルシウムが過剰に流出し、骨粗鬆症になりやすいといわれています。アグリコン型イソフラボンを摂取することで、エストロゲンに似た働きをして骨粗鬆症を予防します。
-注意-
イソフラボンは代謝される速度が速いので、毎日続けて摂ることが大切です。しかし、妊娠期や授乳期の女性は、女性ホルモン様の作用があるので、大量に摂取することは止めて下さい。
骨密度を高く維持するためには、1日に40mg程度のイソフラボンを摂取することが望ましく、豆腐では約100g、納豆なら約60gを毎日食べればよいことになりますが、現在の日本人の1日当たりの推定イソフラボン摂取量は約18mgとされています。
◆フラクトオリゴ糖
→「おなかの調子を整える食品」、「ミネラルの吸収を助ける食品」
◆MBP(乳塩基性タンパク)
MBPとはミルク・ベーシック・プロテイン(Milk Basic Protein)の頭文字を取ったもので、日本語では、乳塩基性タンパク質と呼ばれる牛乳や母乳に含まれる天然の微量タンパク質です。
-作用-
乳塩基性タンパク質は、骨の細胞に直接作用して、骨をつくる骨芽細胞の働きを活発にし、骨にカルシウムを取り込みやすくして骨の形成を助けます。また、骨を壊す破骨細胞の働きを調節して、骨からカルシウムが溶け出すのを抑えます。
-注意-
牛乳由来成分のため牛乳アレルギーの人は注意して下さい。
◆ビタミンK2(メナキノン-7)
ビタミンK2は化学名メナキノンとも呼ばれ、メナキノンは1~14までの14種類があります。納豆に含まれるビタミンK2はメナキノン‐7で、ネバネバの成分である納豆菌によって生産されます。ビタミンK2は腸内細菌によっても少しは合成されますが、食物の中でビタミンK2を多く含むのは唯一納豆だけです。
*ビタミンK:
ビタミンKの「K」はドイツ語の「凝固」を意味する「koagulation」の頭文字からとられ、血液の凝固作用に深く関わっているビタミンです。ビタミンKにはビタミンK1~K7の7種類あり、その中のK1(フィロキノン)とK2(メナキノン)の2種類が天然物質で、胆汁と共に小腸で吸収されます。
K1は主に植物の葉緑体でつくられるのでホウレン草、ブロッコリーなどの緑黄色野菜や海藻に含まれ、K2は微生物(細菌)によってつくられるため納豆などの発酵食品に多く含まれます。
K3(メナジオン)以降は科学的に合成され、また、K4(メナジオール)以降は効き目が弱いためあまり重要視されていません。
-作用-
骨にカルシウムが結合する際、オステオカルシンというタンパク質がカルシウムに対して一種の糊の役目を果たします。ビタミンK2はそのタンパク質を作り、カルシウムの骨形成(骨の石灰化)を助け、また、骨を壊す破骨細胞の働きを調節して、骨からカルシウムが溶け出すのを抑えます。
-注意-
健康な人は消化管で大腸菌のような腸内細菌が常にK2を作っているため問題ありません。ところが年をとったり、抗生物質を服用すると、腸内細菌が弱ってきてK2の量が減ります。
納豆100g中に約1000μgのメナキノン-7を含みますので、正常な人は1日に体重1kgあたり1μgを摂ればいいでしょう。
ビタミンKは血液凝固に関与するため、血液凝固阻止剤のワルファリンカリウムの作用を減弱させる可能性があるため、この薬剤を服用している人はビタミンK含有食品を摂らないようにして下さい。
◆ポリグルタミン酸
ポリグルタミン酸は自然界では、納豆菌が発酵のプロセスにおいて納豆のネバネバをつくっている成分で、これはアミノ酸の一種であるグルタミン酸が30~5000個結合したものです。
-作用-
小腸でのカルシウムとリン酸などとの不溶物の生成を防止して、可溶性のカルシウムを増加させ、カルシウムの体内への吸収を促進するとされています。
-注意-
デキストリンを配合しているため、過剰摂取や体質・体調によって、軟便、下痢を起こすことがあります。
〔参考資料〕
小笠原信之:特定保健用食品,最新サプリメント・ガイド,からだの科学増刊号,日本評論社,2000
堀美智子:サプリメントの基礎知識,薬事日報,2005
日本サプリメント協会:サプリメント健康バイブル,SAPIOムック,2004
古泉秀夫:健康食品Q&A,じほう,2003
板倉弘重:循環器疾患に対するサプリメント,治療,Vol.87 No.10,2791-2794,2005
大澤謙二:「歯の健康に寄与する特定保健用食品」,東京都薬剤師会雑誌,Vol.25 No.4 8-12,2003
(c)東海四県薬剤師会情報システム委員会(旧 TOP/NET)
※本コンテンツは、作成当時(2009年)の知見に基づいたものになります。最新の知見をご確認のうえでご利用ください。